訪問看護の知識

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訪問看護の緊急時の対応方法は?初動の判断から対応の流れまで解説

訪問看護の緊急時の対応方法は?初動の判断から対応の流れまで解説

訪問看護における緊急時対応について、「一人で対応できるのか不安」「難しそう」と感じている看護師は少なくありません。

訪問看護は基本的に一人で訪問するため、その場での判断力や対応力が求められます。さらに、緊急対応は頻繁に経験するものではないからこそ、日ごろからの備えが重要です。

本記事では、訪問看護における緊急時の対応の流れを事例をもとに解説します。

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訪問看護の緊急対応はなぜ難しいのか

訪問看護に緊急連絡をする家族

訪問看護の緊急対応は病棟での対応と比べると難しく感じやすいです。

病棟では、急変時に医師や他の看護師にすぐ応援を求められる環境かつ、検査や処置に必要な物品もそろっています。

一方、訪問看護は限られた物品と環境の中で利用者さまの状態を観察し、必要な処置を行わなければいけません。加えて看護師一人での訪問なので、素早いアセスメントや自ら判断することが求められることから、不安や責任の重さを抱えやすいです。

こうした病棟との環境の違いが、訪問看護の緊急対応を難しくしている大きな要因でもあります。

訪問看護でよくある緊急時のケース

訪問看護の現場で多い緊急時のケースとしては、主に以下の内容が挙げられます。

  • 転倒(意識が清明な軽い打撲、頭部外傷、強い疼痛など)
  • 疼痛(突然の強い疼痛、持続する疼痛、がん性疼痛の増悪など)
  • 体調の変化(発熱など)
  • 疾患における病状悪化 など

これらのケースは訪問時に発見されることもあれば、オンコールで対応することもあります。

緊急時の対応で共通するのは、今度この状態がどう変化する可能性があるかを予測する視点が重要という点です。症状だけで判断するのではなく、背景にある疾患や今後起こりうるリスクを含めて総合的にアセスメントすることが求められます。

緊急時の対応フロー

自宅で転倒してしまった高齢者

では実際に、訪問看護における緊急時対応の流れを解説していきます。

緊急対応は、訪問先で利用者さまの状態悪化に気づくケースだけでなく、ご家族などからのオンコールで状況を把握するケースもあります。後者の場合、訪問前の電話の段階で適切な指示を行うことで、その後の対応や利用者さまの安全に大きく関わります。

例えば「転倒して動けない」といった連絡を受けた場合、まずご本人を安全な場所へ移動させられるかを確認します。移動が難しい場合は、無理にベッドへ移そうとするとかえって危険を伴うため、看護師が到着するまでその場で待っていてもらうよう伝えます。

このように、緊急訪問に向かう前の電話対応も含めて、緊急時の対応は始まっています。次の項目から、訪問後の具体的な対応の流れを見ていきましょう。

最初に行う初期対応

緊急時の初期対応では、まず生命の危険がないかを迅速に確認することが最優先です。

最初に呼びかけや刺激を行い、意識レベルを評価します。意識が確認できれば、少なくとも呼吸は維持されていると考えられます。ただし、意識があっても呼吸が不十分なことはあるため、回数やリズム、深さなど呼吸状態に異常がないかも確認します。

あわせて重要なのが安全の確保です。利用者さまの周囲に危険物がないかを確認し、安全な体位を整えることで、二次的な事故を防ぎます。 

このとき「まずバイタルサインを測定しなければ」と焦ってしまいがちですが、本人の安全が確保できていることを優先し、そのうえでバイタルサインを測定するようにしましょう。

観察する項目内容

観察する項目は以下の通りです。

  • 意識レベル
  • 呼吸状態
  • 循環動態(血圧、脈、皮膚の冷感・チアノーゼなど)
  • 外傷の有無 など

可能であれば、意識確認と同時に脈拍や呼吸の状態もあわせて観察する、脈に触れる際に冷感を確認する、同時にチアノーゼの有無を確認するなど、複数の項目を一度に確認することで、より効率的に全身状態を把握できます。 

緊急度を判断するための観察ポイント

救急搬送が必要と判断した場合は、順序立てて対応することが重要です。まず、その場にいるご家族へ状況と搬送の必要性を説明します。病院で受診してもらうことでの安心と安全を優先することを伝えましょう。あわせて事業所の管理者へ簡潔に報告します。

訪問診療が入っている場合は、主治医への連絡を最優先にします。搬送の要否について医師の指示を仰ぐ必要があるためです。搬送が決定したら119番通報を行い、以下の内容を正確に伝えます

  • 救急である旨
  • 所属事業所名
  • 現在の病状や状況
  • 利用者さまの氏名、住所
  • 搬送先が決まっていれば伝える

救急隊が到着するまでの間は容体を継続的に観察しながら、搬送の準備を進めます。ご家族がいる場合は以下の物品を用意してもらいます。

  • マイナンバーカード
  • 保険証類(医療、介護、障害者手帳、指定難病受給者、自己負担限度額管理手帳など)
  • 診察券
  • 財布
  • お薬手帳
  • 内服薬
  • 外靴、着替え、日用品など

入院にならなかった場合に備えて、外靴や財布なども準備しておくよう声をかけておくと安心です。あわせて火の元の確認など、自宅を空ける準備も行います。

救急隊が到着したら速やかに誘導し、これまでの経過と現在の状態を報告します。主治医やケアマネジャーの情報を求められることもあるため、事前に整理しておくとスムーズです。今後の連絡のために名刺を渡しておくと、その後の連携が取りやすくなります。

搬送後は関係機関へ状況や搬送先を報告し、情報共有を行います。

救急搬送しないケース

救急搬送の必要が現時点でないと判断した場合は、その場で実施できる適切な対応を行います。あらかじめ主治医から、発熱時や疼痛時での臨時指示が出ていれば、指示に従って処置や観察を進めます。

一方で、搬送すべきか迷うケースも少なくありません。判断のポイントは「今後どのように状態が悪化する可能性があるか」を見極めることですが、経験の浅い訪問看護師にとっては難しい判断となります。

少しでも迷いがある場合は自己判断せず、主治医へ連絡して指示を仰ぎましょう。「忙しそうだから」と連絡をためらうことは、リスクを高める行為につながります。

また、事業所の管理者へ相談することも有効な手段です。決して一人で抱え込まず、必ず誰かと情報を共有しながら判断するようにしましょう。

ご家族が同居している場合は、今後起こりうる状態変化と、どのような症状が出た場合に連絡が必要かを具体的に伝えておきます。変化があればすぐに連絡してもらう体制を整えておくことが、急変時の迅速な対応につながります。 

緊急時に備えて日ごろからできることは?

利用者さまの状態変化は予測できないことも多く、どれだけ経験を積んでいても急変に直面する可能性はあります。いざというときに慌てず対応できるよう、日ごろから準備を整えておきましょう。 

緊急時の対応方針を事前に取り決めておく

緊急時に適切な対応を行うためには、あらかじめ対応方針を取り決めておくことが非常に重要です。ACP(Advance Care Planning)を通してDNARの有無や今後の治療、ケアの方針を確認し、利用者さまの意思を尊重した対応ができるよう準備を整えておきましょう。

また、これらの方針をご家族や主治医、ケアマネジャーなど関係職種と共有しておくことで、緊急時も一貫した対応が取れるようになります。

緊急連絡先を把握しておく 

主治医やケアマネジャー、ご家族、その他の支援者、救急サービスなど、関係機関の緊急連絡先を事前に把握しておくことも大切です。関係機関へスムーズに連絡できる体制を整えておくことで、判断や対応の遅れを防ぐことができます。

特に独居の利用者さまの場合は、保険証や診察券などの保管場所も訪問時に確認しておくと緊急時に慌てず対応できます。これらの情報は訪問看護開始時から把握し、関係機関とも共有しておきましょう。

訪問時のアセスメントと物品管理

普段の訪問時のアセスメントと物品管理も、緊急時への備えとして重要です。毎回の訪問でアセスメントを丁寧に行い、利用者さまの状態変化を見逃さないように意識しましょう。

医療機器を使用している利用者さまは急変リスクが高いため、機器の状態確認や動作チェックは欠かせません。普段使用していない物品や過去に使用していた物品も緊急時に必要となる場合があるため、補充状況や劣化の有無を定期的に確認しておきます。

また、機器トラブルに備え、業者の連絡先も緊急連絡先として把握しておくと安心です。 

緊急対応のシミュレーションをしておく

緊急時に焦らず対応できるよう、シミュレーションや訓練を日ごろから行いましょう。個人レベルだけでなく、事業所単位でも定期的に緊急時を想定した対応練習をすることで、実際の場面でも落ち着いて行動できるようになります。

また、緊急時の対応マニュアルやフローチャートを事前に作成しておくことも有効です。経験の浅い訪問看護師でも手順に沿って対応でき、個人の経験差による判断のばらつきを減らすことができます。

緊急対応は日常的に頻繁に起こるものではありません。他のスタッフが対応した事例もその都度確認し、カンファレンスなどを通じて事業所全体で共有していくことが、組織全体の対応力の向上につながります。

訪問看護における緊急時の対応事例

電話を受けて緊急訪問した訪問看護師

ここからは、訪問看護における緊急時の対応事例を、訪問時に発生したケース・夜間オンコールでのケースの2パターン紹介します。

訪問したら利用者さまの状態が悪化していたケース

【利用者さまの背景】
80代男性・独居。うつ病と認知症があり、不安が強く内服管理も必要であったため、週1回の訪問を行っていました。

普段の訪問ではインターフォンを鳴らすとご本人が鍵を開けてくれますが、この日は何度呼びかけても応答がありませんでした。玄関の鍵が開いていたため、呼びかけながら室内へ入ると、ベッド横で仰臥位のまま倒れている利用者さまを発見。

意識は清明でしたが、腰の痛みを強く訴えていたため、転倒による圧迫骨折の可能性を疑い、救急搬送が必要と判断しました。

この利用者さまは訪問診療を導入されていませんでしたが、地域の民生委員が関わっていたため、搬送後に状況を報告し、関係機関との情報共有を行いました。なお、搬送後は状態が安定するまで、しばらく入院となりました。

夜間オンコールで緊急対応をしたケース

【利用者さまの背景】
90代女性・娘家族と同居。重度認知症により寝たきりで、口からの食事はできない日が多く、時折点滴を実施していました。

ある夜、娘から「熱がある」と連絡が入りました。電話で状況を確認し、再度熱を測ってもらったところ37.8度とやや高めだったため、状況を確認するために訪問を実施しました。

娘に食事や水分の摂取状況を確認すると、十分にとれていない様子でした。水分摂取は1日100cc前後と少なく、排尿も減少していることから脱水傾向が疑われました。このまま経過観察するのは危険と判断し、訪問診療医へ報告。医師の指示により点滴を実施しました。

脱水は一時的に改善したものの経口摂取は困難な状態が続き、その後、訪問診療医よりターミナル期であることが改めて説明され、ご家族とともに看取りの方針となりました。

まとめ

今回は、訪問看護における緊急時の対応方法について解説しました。訪問看護は看護師が一人で訪問するため、急な事態にも落ち着いて対応できるよう、日ごろから準備を整えておくことが大切です。

緊急時には一つの視点だけで判断するのではなく、症状や背景、今後のリスクなどを踏まえて多角的にアセスメントすることが求められます。また、判断に迷った際には一人で抱え込まず、周囲と連携しながら対応しましょう。

こうした多角的な視点と周囲との連携が、訪問看護における緊急対応の質を高めることにつながります。

訪問看護に関する記事を掲載中です。ぜひ、日々の訪問業務の参考にしてみてください。

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編集部

訪看オウンドメディア編集部

訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。

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