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行動変容とは?看護師が知っておきたい5つのステージと患者さまへのアプローチ方法

患者さまに「生活習慣を変えましょう」とお伝えしても、なかなか行動に移していただけない……。慢性期病棟や退院支援、訪問看護の現場で、そんな悩みを抱えている看護師は多いのではないでしょうか。
人間の考え方や意識が変わることで、行動や習慣が変化し定着していくことを行動変容といいます。患者さまの行動変容を促すには、その方が今どの段階にいるのかを見極め、段階に合わせた働きかけをすることが求められます。
本記事では、看護師が知っておきたい行動変容の基本から5つのステージごとのアプローチポイント、現場での事例まで解説します。
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行動変容とは|看護師が担う役割

行動変容とは、患者さまがより健康的な行動を身につけられるよう、心理学などの知見を活かして支援していく考え方です。
生活習慣病の予防・改善や慢性疾患の療養支援など、患者さまご自身の生活と密接に関わる場面で重視されています。
看護師の役割としては、患者さまの「変えたい」という気持ちを引き出し、その方が自分の力で行動し続けられるよう寄り添うことにあります。一方的に指導するのではなく、患者さまが主体となれるように伴走する姿勢が求められます。
行動変容が求められる看護の場面
行動変容支援が求められる場面は、看護のさまざまな領域に広がっています。
代表的なのは、糖尿病・高血圧・心不全といった慢性疾患を抱える方の生活習慣の継続支援です。食事・運動・服薬管理など、患者さまご自身が日々取り組まなければならないテーマが数多くあります。
また、退院後の在宅療養においても、ご家族と協力しながらセルフケアを続けていく必要があり、退院支援や訪問看護の現場でも行動変容支援は欠かせないスキルとなっています。
行動変容の5つのステージとアプローチ方法

行動変容は突然やる気が出て変わるものではなく、いくつかの段階を踏みながら少しずつ進んでいきます。
代表的な考え方が、米国のプロチャスカらが提唱した行動変容ステージモデルです。このモデルでは行動を変える過程を、無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期の5つに分けて捉えます。
重要なのは、各ステージで患者さまの気持ちが大きく異なることから必要なアプローチもステージごとで変わるという点です。以下、各ステージの状態と働きかけの方法を順に紹介します。
参考:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム 健康づくりサポートネット「行動変容ステージモデル」
無関心期~関心を持ってもらうきっかけづくり
無関心期は6カ月以内に行動を変える意思がない段階です。「自分には関係ない」「今のままでも困っていない」と感じていらっしゃることが多く、こちらが熱心に指導しても聞き入れてもらえないことが少なくありません。
この段階でいきなり具体的な行動変容を促しても、効果はほとんど期待できません。まずは変えるとどんなメリットがあるのか、変えないとどんなリスクがあるのかを伝え、関心を持ってもらうことを優先します。
ただし、合併症や悪化のリスクなどネガティブな情報だけを強調すると、患者さまが防衛的になったり反発を強めたりする可能性があります。健康的な生活を実践していらっしゃる方の前向きな事例もあわせて伝えることで、患者さまが「自分にもできるかもしれない」と感じられるよう工夫してみましょう。
無関心期の方には根気強く情報提供を続けながら、対話の糸口を少しずつ作っていく姿勢で接することが大切です。
関心期~信頼関係を築き、不安を受け止める
関心期は6カ月以内に行動を変えようという意思がある段階です。「変えたほうがいい」と頭ではわかっているものの、実際の行動には移せず迷っている状態ともいえます。
この時期に大切なのは、患者さまの不安や葛藤を丁寧に受け止めることです。行動を変えることへの負担感、続けられるかどうかへの不安、家族や仕事との兼ね合いなど、患者さまが抱えていらっしゃる迷いには必ず理由があります。傾聴の姿勢で接し、信頼関係を築くことから始めましょう。
そのうえで、行動を変えることで得られるメリットが、変えないことのデメリットを上回ると感じていただけるよう情報を提供します。
あわせて「これなら私にもできそう」と思えるような具体的な方法もお伝えできると、次のステージに進みやすくなります。
ポイントは、関心期の患者さまは繰り返し同じ場所で足踏みすることがよくある点です。焦って次の段階に進めようとせず、患者さまのペースを尊重しましょう。
準備期~目標を一緒に立て、自信を引き出す
準備期は1カ月以内に行動を変える意思がある段階です。具体的な行動計画を立てて、いよいよ実行に移していく時期にあたります。
この段階で重要なのは、目標と方法を患者さまと一緒に決めることです。看護師が一方的に「これをやってください」と指示するのではなく、「どんな方法なら続けられそうですか?」と問いかけて、患者さまご自身に選んでいただきましょう。自分で選んだ目標であるほど、取り組む意欲も自信も高まります。
目標は最初から高く設定しすぎないことがポイントです。たとえば「毎日30分歩く」よりも、「まずは週3回、10分から始める」など、無理なく実行できる小さなステップに分解しましょう。
必要な情報があれば看護師から提供しつつ最終的な決定は患者さまに委ねる関わりが、実行期に向けた自信を引き出します。
実行期~継続を支え、逆戻りを防ぐ
実行期は行動を変えてから6カ月未満の段階です。新しい習慣を始めて間もない時期であり、まだ自信が十分でなく、以前の生活に戻ってしまう「逆戻り」のリスクが高い時期でもあります。
この時期には、続けられていることをしっかり認めて褒めることが何より大切です。「今週も間食を我慢できたんですね」「血糖測定を毎日続けていらっしゃるのは素晴らしいです」など、小さな進歩を具体的な言葉にして伝えましょう。
また、自分へのご褒美を設けるなどの動機づけを工夫したり、ご家族や職場の協力を引き出したりすることも、継続をサポートするうえで効果的です。
生活習慣の背景に家庭や職場の環境要因がある場合、ご本人の努力だけでは続けにくいため、周囲の理解を得る働きかけも看護師の役割になります。
うまくいかなかった日があっても、責めずに「また一緒に考えましょう」と前向きにお伝えし、維持期に向けた支援を続けていきましょう。
維持期~継続を認め、奨励する
維持期は、行動を変えてから6カ月以上が経過し、新しい習慣が定着しつつある段階です。患者さまご自身も続けられているという自信を持てるようになっています。
この時期の支援は、これまでの努力を心からねぎらい、今後の継続を応援することが中心です。「ここまでよく頑張ってこられましたね」と一緒に振り返り、患者さまが自分の歩みを肯定的に受け止められるよう関わりましょう。
ただし、「自信がある」と話していらっしゃっても、ストレスや生活環境の変化をきっかけに以前の生活に戻ってしまう方もいます。維持期に入ったから支援は不要と判断するのではなく、定期的な声かけや状況の確認を続けることが大切です。
必要に応じて新しい目標を一緒に考えたり、追加の情報を提供したりするのもよいでしょう。
看護師が行動変容を支援する際のポイント

5つのステージ別アプローチに加えて、すべての段階に共通して意識したい支援のポイントがあります。
ここでは特に重要な自己効力感を高める・信頼関係を構築する・環境を整えるの3点について、現場で活かしやすい形で紹介します。
自己効力感を高める
自己効力感とは、ある行動を自分にもできそうだと感じられる自信のことで、「セルフ・エフィカシー」とも呼ばれます。
心理学者のバンデューラが提唱した概念で、自己効力感が高まると行動への意欲が増し、困難にぶつかっても諦めにくくなることが知られています。行動変容支援において、患者さまの自己効力感を引き出すことは欠かせない視点です。
自己効力感を高めるアプローチには複数の方法がありますが、看護現場で取り入れやすい成功経験と代理経験について以下に紹介します。
参考:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム 健康づくりサポートネット「セルフ・エフィカシーを高めるポイント」
成功経験
成功経験とは「自分はうまくできた」という体験を積み重ねることです。自己効力感を高める方法のなかで、最も効果が大きいとされています。
ここで重要なのは、最初から高い目標を掲げないことです。実現可能な小さな目標を立て、コツコツとクリアしていただくことで「やればできる」という感覚を積み上げていきます。
たとえば、食事療法でいきなり毎食塩分6g以下に抑えることを目指すのではなく、夕食の味噌汁を1日おきにするなど、達成しやすい目標から始める方法が効果的です。
小さな成功の積み重ねが、最終的に大きな行動変容につながります。
代理経験
代理経験とは、自分と似た立場のモデルが行動を続けている姿を見聞きすることで、「自分にもできそうだ」と感じられることをいいます。
同じ疾患を持つ患者さまが減塩生活を続けている例を紹介したり、患者会や交流会で経験者の話を聞いていただいたりするのも方法の一つです。
立場が同じ方が実際に続けている姿は、医療者からの説明以上に説得力をもつこともあるでしょう。モデルとなる方の続けるコツや乗り越えた工夫を具体的に共有することで、患者さまがご自分の生活にも取り入れやすくなります。
信頼関係の構築
行動変容支援において特に重要なのが、患者さまとの信頼関係です。
行動が変わらない背景には、その方なりの理由や、変えるのを妨げている障壁が必ずあります。それを見つけるためには、患者さまの現状・背景・価値観を深く理解する必要があり、信頼関係なしには進められません。
信頼関係を築くために大切なのは、患者さまに尊厳をもって接し、傾聴の姿勢で話を聴くことです。否定や禁止の言葉を避け、指示や命令ではなく提案する姿勢で関わることが大切とされています。
「ダメです」「やめてください」と伝えるよりも、「こんな方法はいかがでしょうか」と問いかける形にするだけでも、患者さまの受け取り方は大きく変わります。
特に、糖尿病など生活習慣病を持つ患者さまには、「自己管理ができていない」と非難される経験を重ねてこられた方も少なくありません。「あなたなら大丈夫」と寄り添う姿勢が、行動変容への意欲を支えます。
参考:佐藤智也/日WOCM会誌 27(1): 28-36 2023 第31回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会教育講演1「患者さんの行動変容をどう促すか:健康行動科学からのアプローチ P29,31」
モチベーションを維持しやすい環境づくり
患者さまの行動変容は、ご本人の意思だけでなく周囲の環境にも大きく左右されます。やる気はあるのに環境が整っていないために続けられない、という方は少なくありません。
たとえば糖尿病の食事管理が必要な方でも、ご家族の食生活がまったく異なれば実行が難しくなり、在宅療養中の方なら、ご自宅の動線や物品の配置が運動療法の妨げになっていることも考えられます。
患者さまの視点に立って環境を見直し、必要に応じてご家族への説明や、栄養士・理学療法士・ケアマネジャーなど他職種との連携を進めていくことも、看護師の重要な役割です。
本人だけで頑張らせない環境づくりを意識しましょう。
看護現場での行動変容支援の事例
ここでは、行動変容支援の事例を、病棟と訪問看護それぞれの場面から紹介します。
患者さまの状態や生活背景はそれぞれ異なりますが、ステージに応じた関わりが行動の変化につながった具体的なイメージが伝わるかと思います。
※事例は個人が特定されないよう一部改変しています。
病棟での事例
慢性期病棟に入院されていた、2型糖尿病の60代男性Aさまの事例です。
長年仕事優先の生活を送り、外食中心の食事と運動不足が続いていらっしゃいました。入院当初は「食事制限なんてできるわけがない」と話し、典型的な無関心期の状態です。
この段階で具体的な食事指導を行っても受け入れていただける可能性は低いため、担当看護師はまず変えるとどんなメリットがあるのかを、同じ年代の他の患者さまの事例も交えながら少しずつ伝えていきました。
1週間ほど経ったころ、Aさまから「孫の結婚式までは元気でいたい」という言葉が聞かれ、行動を変えようという気持ちが芽生え始めていることがわかりました。
ここから関心期、準備期へと進む過程では、栄養士とも連携しながら、外食時のメニューの選び方を一緒に考えていきました 。
退院時には、Aさまご自身で「まずは週3回、夕食を自宅でとる」という小さな目標を立て、その後の外来でも行動の継続が確認できています。
訪問看護(在宅)での事例
慢性閉塞性肺疾患(COPD)で在宅療養中の70代女性Bさまの事例です。
長年の喫煙習慣があり、訪問看護開始時点では「もう年だし、今さら禁煙しても変わらない」と話す無関心期の状態でした。
ただ、訪問を重ねるうちに、Bさまから「孫と一緒に散歩できる元気を取り戻したい」という言葉が聞かれるようになります。
その思いを受け、担当看護師は「散歩を続けるには肺の状態をこれ以上悪化させないことが大切で、禁煙がその一歩になる」と、少しずつ伝えていきました。
やがてBさまご自身も「孫のために、少しでも吸う本数を減らしてみようか」と口にするようになり、ゆっくりと関心期へと気持ちが動いていきます。
準備期に入ってからは、ご本人と相談しながら「まずは1日3本減らす」という現実的な目標を設定し、ご家族にも責めずに支える姿勢で接していただくよう伝えています。
実行期には本数を減らせた日をカレンダーに記録する方法を提案し、ご本人もご家族と一緒に達成感を共有できる仕組みをつくりました。
在宅で行動変容を続けるには、ご本人だけでなくご家族を含めた環境を整える視点が重要なポイントになります。
まとめ
行動変容支援は、患者さまの状態に応じたステージ別のアプローチと、自己効力感や信頼関係などの土台づくりの両方が大切です。
看護師の役割は「変えさせる」ことではなく、患者さまが自分の力で行動を続けられるよう、ステージごとに必要な働きかけを丁寧に重ねていくことにあります。
うまくいかないことがあっても、それは患者さまの問題ではなく、ステージや支援方法の見直しのサインかもしれません。
本記事で紹介した5つのステージと支援のポイントを、明日からの患者さまとの関わりに少しずつ取り入れてみてください。
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編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。