訪問看護のこと
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訪問看護で働くのに資格は必要?在宅の現場で役立つ資格も解説

政府は進行する高齢化に対応するため、疾病や障がいを抱えた場合でも住み慣れた地域や自宅で生活を継続できるよう地域包括ケアシステムの構築を推進しています。
こうして在宅医療の需要が高まるなか、在宅生活を支える存在として注目されているのが訪問看護師です。
本記事ではこれから訪問看護で働きたい方に向けて、訪問看護で働くのにどんな資格が必要なのか解説していきます。また、在宅で役立つ資格についても紹介しているので、訪問看護に興味のある方は参考にしてみてください。
訪問看護未経験の方もお気軽にどうぞ!
目次
訪問看護師とは?
訪問看護師は、病気や障がいを抱えたあらゆる年代の方が、住み慣れた自宅で療養生活を継続できるようサポートする看護師を指します。
定期的に利用者の自宅に訪問し、全身状態の観察をはじめ日常生活のサポート、医療処置、ターミナルケアなど、利用者に合わせたケアを提供します。
また、利用者やその家族からの相談を受けることも多く、在宅療養に関わる他職種との連携をとりながら利用者が安心して療養生活を送れるよう支援していくのが訪問看護師の役割です。
訪問看護で働くのに必要な資格や経験は?

訪問看護で働くには、特別な資格や経験が必要か気になる方は多いでしょう。ここでは、訪問看護で働くのに必要となる資格や経験について説明します。
訪問看護師に必要な資格
訪問看護師として働くためには、看護師の資格以外に特別な資格は必要ありません。
准看護師の資格でも訪問看護で働くことができますが、その場合は正看護師の訪問に比べて算定が低く設定されているため、事業所によっては准看護師の採用を行っていない場合もあります。
さらに、准看護師はオンコール対応をすることができない、訪問看護計画書や報告書の作成ができないなどの制限があります。
また、訪問時の移動手段として車を用いている事業所では運転免許証が必須になるため、あらかじめ移動についても確認しておきましょう。
訪問看護に必要な経験|臨床経験を求める場合が多い
訪問看護に必須となる経験は特にありませんが、一般的に3〜5年の臨床経験を求める事業所が多いです。その理由としては、訪問看護では看護師が1人でケアを行うことから病院のようにすぐに応援を頼むことできないため、臨床経験が浅い看護師だと臨機応変に対応できない可能性があるからです。
また、在宅では病院のように医療材料がそろっておらず家にあるものを応用することも多いため、一通りの看護技術が行えるとスムーズに対応しやすくなります。
こういった理由から、ある程度の臨床経験を求める事業所が多いです。小規模な事業所だと教育体制が整っていないこともあるため、看護技術に不安がある方は事業所の教育体制を確認しておくと安心です。
訪問看護師になるために必要な条件については、下記で詳しく紹介していますので合わせて参考にしてください。
関連記事:訪問看護師になるには?必要な資格や求められるスキルについて解説
訪問看護に役立つ資格は?

訪問看護に役立つ資格を、以下にピックアップしました。それぞれの資格について詳しく紹介します。
・認定看護師
・専門看護師
・特定行為研修を修了した看護師
・ケアマネジャー(介護支援専門員)
・認知症ケア専門士
・終末期ケア専門士
・在宅看護指導士
認定看護師
認定看護師は、日本看護協会から認定を受けた看護師のことをいい、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有しています。
5年以上の実践経験を持つ看護師が、日本看護協会が定める教育機関で6カ月以上かつ600時間以上の教育課程を修了し、認定審査に合格することで認定看護師になることができます。
認定看護師には全19の分野がありますが、そのなかでも在宅で役立つ認定看護師の分野を3つピックアップして紹介します。
在宅ケア認定看護師
在宅ケアを必要とする方が住み慣れた地域や家庭でその人らしく療養生活が送れるよう、高い水準の看護を提供する在宅ケアのスペシャリストです。在宅ケア分野の専門的な知識やスキルが身につき、利用者や家族への支援に役立ちます。
在宅ケア認定看護師になるには、5年以上の実践経験のうち在宅ケア領域での経験が3年以上必要になります。
緩和ケア認定看護師
がんなどの疾患に伴う苦痛を抱える患者やその家族に対し、身体的・精神的・社会的な苦痛の緩和とQOL(生活の質)の向上を支援する専門家で、緩和ケアに特化した知識と熟練した看護技術を持ち合わせています。
この認定を受けるには、5年以上の実践経験のうち3年以上は緩和ケア領域での経験が必要です。在宅では病院と比べ医師とのコミュニケーションが取りにくくターミナル期は不安が増大しやすいため、ターミナル期の利用者にとって心強い存在になります。
皮膚・排泄ケア認定看護師
創傷・オストミー・失禁看護の分野において専門的な知識と看護技術を用いて患者を支援する看護師をいいます。
在宅でも皮膚や排泄面にトラブルを抱える利用者は多く、その方々へ水準の高いケアを提供することで利用者の尊厳を保ち、安心した在宅生活を送るのに重要な役割を担います。
皮膚・排泄ケア認定看護師も同様に、5年以上の実践経験のうち3年以上の皮膚・排泄ケア領域での経験が必要です。
今回説明した分野以外にも訪問看護に役立つものがあるので、認定看護師に興味のある方は各分野について調べてみてもよいでしょう。
参考:公益社団法人 日本看護協会「認定看護師」
専門看護師
専門看護師は、特定の専門分野において高い知識と技術を持つ看護師のことで、日本看護協会が認定する資格です。
認定看護師の役割に含まれる質の高い看護ケアだけでなく、地域との調整、教育や研究といった特定分野での幅広い活躍が期待されます。また、専門看護師になるには大学院に2年間通うことが必須条件なので、認定看護師よりも難易度が高いといわれています。
専門看護は全14分野あり、そのなかでも家族支援・在宅看護・地域看護の分野は在宅領域に直結します。そのほか、がん看護・小児看護・老人看護・慢性疾患看護・精神看護なども訪問看護で生かしやすいでしょう。
参考:公益社団法人 日本看護協会「専門看護師」
特定行為研修を修了した看護師

「特定行為に係る看護師の研修制度」は、2015年10月から開始された保健師助産師看護師法に位置づけられた研修制度です。特定行為研修を修了した看護師は、医師の手順書に沿って必要に応じた特定行為を行うことができるようになります。
常に医師がいる病院とは違い、訪問看護では医師との連携に時間がかかることがあるため、特定行為研修を修了した看護師の存在は需要があると考えられます。
特定行為は21区分38行為がありますが、訪問看護で行うことの多い行為を下記に示すので参考にしてください。
・気管カニューレの交換
・胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換
・膀胱ろうカテ―テールの交換
・褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない懐死組織の除去
・脱水症状に対する輸血による補正
参考:一般社団法人 看護師の特定行為に係る指定研修機関協議会「看護師の特定行為研修制度ポータルサイト」
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネージャー(介護支援専門員)は介護保険制度をもとに定められた専門職で、現場ではケアマネと略されます。
主な仕事内容は、要介護者や要支援者が適切な介護サービスを利用するためのケアプラン作成や、他職種との連携です。
訪問看護では、看護ケアの提供だけでなく、介護保険制度の仕組みやケアマネジャーの仕事内容について尋ねられることも多いため、保険制度の知識やケアマネージャの知識を踏まえたうえで利用者に説明できるとよりスムーズに理解を得られるでしょう。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、認知症ケアに関する高い知識と技術、倫理観を備えたスペシャリストです。一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格で、5年ごとの更新制の資格になります。
訪問看護の利用者は全体の約70%を70歳以上の高齢者が占めるため、加齢とともに認知症の利用者も増加傾向にあります。
認知症への看護については看護師も悩む場面が多く、ジレンマを抱えるケースが少なくありません。認知症ケア専門士の存在は、悩んでいた看護ケア解決の糸口を見つけるきっかけとなり、認知症ケアに携わる看護師たちの精神的な支えにもつながるでしょう。
参考:厚生労働省「3 訪問看護ステーションの利用者の状況」
終末期ケア専門士
終末期ケア専門士とは、終末期を迎える方やその家族を支えるための知識や技能を有する資格です。一般社団法人日本終末期ケア協会が2020年に創設した民間資格で、5年ごとに更新が必要になります。
終末期ケア専門士の資格取得後は、スキルアップとして「終末期ケア上級専門士」「JTCAアドバンスインストラクター」を目指すことも可能です。訪問看護でも看取りを行うことがあるため、エビデンスに基づいたケアを提供するだけでなく、痛みや苦痛の緩和といった個々に合わせたケアを実施しやすくなるでしょう。
終末期に関わる資格には緩和ケア認定看護師もありますが、認定看護師はハードルが高いと感じる方はこちらの資格取得を考慮するのも良いでしょう。
在宅看護指導士
在宅看護指導士は2024年に誕生した比較的新しい民間資格です。全国在宅医療マネジメント協会の認定資格で、更新期間は5年とされています。
在宅看護指導士は、訪問看護に特化した知識とスキルの習得だけでなく、家族支援や緊急性の見極め方、経営などの包括的な知識の習得が可能です。在宅のニーズが増すことからも、医療につなげる在宅看護のエキスパートの存在は今後さらに注目されることでしょう。
資格取得者向けのアプリを通して、さまざまな講習を受けることができる環境が用意されており、訪問看護に特化してスキルアップしたい方にお薦めの資格です。
参考:一般社団法人全国在宅医療マネジメント協会「全国在宅医療マネジメント協会」
資格を活かして訪問看護で働いてみませんか?

看護師の資格があれば訪問看護師として働くことが可能です。
病院や施設のように複数の利用者を同時に担当するのではなく、訪問看護は一定の時間を1人の利用者に注力することができます。定期的な訪問で利用者とより深い関わりができるからこそ、日々の訪問での学びは自己成長につながるでしょう。
また、今回紹介した資格以外にも在宅に特化したキャリアアップにつながる資格も複数あるため、今後の需要増加が見込まれる訪問看護で働いてみるのはいかがでしょうか。
白ゆりでは一緒に働いてくれる訪問看護師を募集しています。定期的に職場見学会も開催していますので、興味のある方はぜひ参加してみてください。
【訪問看護リハビリステーション白ゆりの採用情報/職場見学会のお申込み】
白ゆりの採用ページ
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訪問看護リハビリステーション白ゆりについては、下記の記事で紹介しています。
関連記事:訪問看護ステーションとは?白ゆり訪問看護の特徴や働くスタッフについても紹介!
まとめ
訪問看護で働くには、看護師免許以外の特別な資格は必要ないことが理解いただけたかと思います。ただし、看護師1人での訪問が基本になるので一通りの看護技術を身につけ、3〜5年の臨床経験を有していることが条件となっている事業所が多いこともお伝えしました。
また、在宅に特化した資格も複数ありますので、訪問看護で経験を積みながらスキルアップを目指すといったキャリアプランも検討にいれてみてはいかがでしょうか。
近年の高齢化の加速に伴い、訪問看護師の需要はますます高まることが予想されます。訪問看護は、一人ひとりの利用者とじっくり関われるのが魅力です。在宅医療や訪問看護に興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。
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編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。