訪問看護のこと
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訪問看護でできること・できないことを解説!訪問看護サービスの範囲は?

訪問看護への転職に興味のある看護師には、「訪問看護でどこまでできるのか?」「生活支援はどこまで対応していいのか?」と疑問を持つ方も多いかと思います。
病院勤務とは異なり、訪問看護では医療的なケアだけでなく利用者の療養生活をサポートする役割も求められます。しかし、訪問看護サービスの範囲が曖昧なままだと、働く上で戸惑いや不安を感じることもあるでしょう。
この記事では、訪問看護でできること・できないことについて解説します。訪問看護の仕事に興味のある方は参考にしてみてください。
訪問看護未経験の方もお気軽にどうぞ!
目次
訪問看護の基本的な役割

訪問看護とは、看護師が利用者の自宅を訪問し、医師の指示のもとで病気や障がいに応じた看護を行うサービスです。訪問看護師は、利用者が住み慣れた自宅で生活を続けられるよう、多職種と協力しながら療養上の世話をする役割を担っています。
訪問看護でできることは?
訪問看護を利用される方は、基本的に社会保険を活用してサービスを受けているため、訪問看護師が行うケアは医師が発行する訪問看護指示書に記載された内容に基づきます。
また、市区町村から要介護認定を受け、介護保険を利用している方の場合は、訪問看護指示書のほかにケアマネジャーが作成したケアプランをもとに訪問看護計画を作成し、訪問看護サービスを提供します。
そのため、訪問看護師はあくまでも社会保険内でできることを行う必要があるのです。ここからは、訪問看護でできることを以下に説明していきます。
健康状態のアセスメント
まず、メインになるのが利用者の健康状態のアセスメントです。バイタルサイン測定、栄養状態、排泄状況、呼吸や皮膚の状態のほか、その日の心理状況などもコミュニケーションを通して確認します。
利用者により疾患や状態は異なるため、観察するポイントやその日の訴えも違ってきます。事前に利用者の情報をチェックし、前回の訪問と違う点や疾患から考えられる症状などから、どういったケアを行うべきかを考える必要があるため、アセスメントでは「何かおかしい」という違和感を見逃さないようにすることが大切です。
療養生活の世話
利用者が心地良い生活が送れるよう、療養上の世話を行うことも訪問看護師の大切な役割です。具体的には下記の内容となります。
・清潔ケア(清拭などの整容介助)
・栄養管理(食事面での提案など)
・排泄ケア(排泄の自立支援など)
・療養生活の整備(福祉用具の提案など)
転倒しないで一人でトイレに行きたい、安全に食事を楽しみたい。そういった日常生活における利用者の希望を把握し、どうすれば実現できるかを考えながら支援します。
医療処置
訪問看護は、利用者の主治医が発行した訪問看護指示書に基づいた医療処置を行います。指示書には看護師が処置をしても良い範囲が記されており、訪問看護師は指示書がないと医療処置を行えません。
訪問看護でできる医療処置の内容は、病院とそう変わりません。具体的な例を以下に記載します。
・喀痰吸引、管理
・在宅酸素療法の管理、指導
・膀胱留置カテーテル、自己導尿の管理、指導
・ストマの管理
・人工呼吸器の管理
・褥瘡、褥瘡以外の創傷部の処置
・在宅透析の管理、指導
・中心静脈栄養法の実施、管理
・経鼻、胃瘻による経管栄養法の管理
・血糖測定
・点滴注射の実施、管理
・服薬管理 など
在宅では看護師の訪問回数に限りがあるため、痰の吸引や褥瘡のケアなどを家族が実施するケースもあるため、家族に対する指導も訪問看護師が行います。医療処置に使用する医療機器や衛生材料は医療機関が在宅療養者に供給し、自宅で保管してもらいます。
病状悪化の防止
利用者の健康状態を維持するため、訪問看護師は予防的視点を持つことも重要になります。
例えば、同一体位や低栄養などにより発生する褥瘡はストレッチや皮膚の保湿ケアで、寝たきりなどで長時間同じ姿勢を続ける方に起こる拘縮は、体位変換や動作練習などを行って予防します。
病状の変化があった場合は医師に報告し、指示を仰ぐようにしましょう。
リハビリテーション

訪問看護におけるリハビリテーションは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリの専門職が訪問し、サービスを提供します。
身体の硬さが気になる方には関節の運動やストレッチ、歩けるようになりたい方には歩行訓練や筋力トレーニング、食物が上手く飲み込めない方には嚥下訓練を実施するなど、利用者のニーズに合わせた内容で日常生活の自立を図ります。
また、福祉用具の提案や家族への介助方法のアドバイスなども行います。医療処置同様、リハビリの実施には訪問看護指示書が必要です。
療養生活の相談、多職種との連携
病院とは異なり、治療に特化していない自宅で療養生活を送る以上、利用者やその家族は必ず悩みや不安を抱えています。そのため、訪問看護師が悩みに寄り添って解消に繋げていくことが大切です。
健康管理や日常生活に関する相談に対して利用者の生活や病状の理解度に合わせた説明やアドバイスを行い、必要によって在宅ケアサービスや保健・福祉サービスの案内、関係する多職種との連携を調整します。自宅で可能な限り快適に過ごすためにどうすればいいか一緒に模索していくことも、訪問看護師の重要な役割の一つです。
ターミナルケア
訪問看護では、残された余生を穏やかに過ごしていただくために、ターミナルケアを実施しています。訪問看護師は主治医の指示のもと、苦痛を伴う症状の緩和や心理面でのサポートを行いつつ、医師やケアマネジャー、家族と情報共有をしながら連携を図っていきます。
利用者本人の状態が刻一刻と変化していく中で、家族の心境も変わっていきます。状態が悪くなっていくのを目の当たりにして精神が不安定になる方も多く、訪問看護師はそんな不安や悩みに寄り添いながら最期まで必要なケアを行います
訪問看護でできないことは?
利用者が自宅で療養生活を送るために、訪問看護師ができることは多岐に渡ります。しかし、全ての支援ができるというわけではなく、訪問看護指示書やケアプランに記載されていない内容を行うことはできません。
買い物や掃除、調理などの家事全般

家事は生活に必要なものですが、訪問看護はあくまで看護ケアを提供するサービスです。そのため、買い物・洗濯・掃除・調理・ゴミ出しといった日常的な家事全般を訪問看護で行うことはできません。
上記に関係することで訪問看護ができることは、食事の介助や栄養状態に関するアドバイスなどになります。そのほか、独居の利用者で家事が難しいといった場合などには、ケアマネジャーと相談しながら訪問介護や配食サービスなどを提案するといった生活の基盤を整えるための支援を行います。
自宅以外での訪問看護の提供
訪問看護は利用者の自宅で日常生活に沿ったケアを行うことが基本なので、自宅以外での訪問看護の提供はできません。訪問看護ステーションによっては外出先への訪問サービスを行っていますが、保険適用外の自費サービスです。
例外として、サービス付高齢者住宅(サ高住)やグループホームといった福祉施設に入居している方は、訪問看護指示書があれば訪問看護を提供することができます。
外出の同行(通院など)
先述した通り、訪問看護は自宅以外で看護を提供することができないため、通院の付き添いといった外出の同行はできません。
訪問中に「1人で通院できない」といった相談を受けた場合は、外出支援サービスの活用を案内しましょう。
訪問看護を利用できる対象者とは?
訪問看護を利用する方は、医療保険か介護保険が適用され、訪問看護指示書やケアプランが発行された方になります。
医療保険と介護保険の利用条件や対象者、訪問看護サービスを開始するまでの流れは下記の記事に記載していますので、参考にしてください。
関連記事:訪問看護の対象者は?どんな疾患の人が利用する?医療保険・介護保険での違いも解説
補足として、訪問看護の利用者に多い疾患については以下の通りに記載します。
脳血管疾患
認知症
悪性新生物
筋骨格系疾患
統合失調症
パーキンソン病
下記の記事で詳しく紹介していますので、合わせて参考にしてみてください。
関連記事:訪問看護の利用者に多い疾患や割合は?実際の看護内容についても解説
まとめ
訪問看護でできること・できないことについて解説しました。訪問看護ができることは医療面でのサポートがメインになりますが、実際に利用者とやり取りをする中で「あれもやってほしい」という要望が出ることもあり、頼まれれば断れないと感じる看護師も多いでしょう。
ただ、多職種が絡む在宅での療養生活においてはそれぞれの職種に役割分担があるため、対応ができかねる内容については理由を説明し、ケアマネジャーを通して必要なサービスを導入する方向で進めるようにします。
判断に迷った際には、周りの先輩に確認を取りながら指示を仰ぐようにしましょう。
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編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。