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訪問看護の利用者に多い疾患や割合は?実際の看護内容についても解説

訪問看護の利用者に多い疾患や割合は?実際の看護内容についても解説

訪問看護に興味はあるけど、どんな疾患を抱えている利用者が多いのか疑問を抱く看護師は多いのではないでしょうか?また、訪問看護の現場において、看護師がどのようなケアを提供しているのか気になる方もいるかもしれません。

これから訪問看護に携わりたいと考える看護師に向けて、訪問看護の利用者に多い疾患について割合別に分かりやすく解説します。どのような疾患の方が多いのか、実際の訪問看護で行われるケア内容は何かをあらかじめ理解しておくことで、訪問看護への一歩が踏み出しやすくなり、訪問看護で働くことの魅力も感じることができるでしょう。

訪問看護に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

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訪問看護の利用者に多い疾患と割合は?

まずは、訪問看護の利用者に多い疾患は何か、それぞれの割合について解説します。

訪問看護の対象は小児から高齢者までの幅広い年齢層の方ですが、昨今の高齢化の影響もあって利用者の大半が高齢者になります。高齢者といっても訪問看護の利用者は、日常生活が自立されている方から、医療依存度の高い方・緊急時の対応が必要な方など多岐に渡ります。

訪問看護ステーションの利用者傷別内訳
出典:訪問看護の現状とこれから2024年版

公益財団法人日本訪問看護財団の「訪問看護の現状とこれから 2024年版」によると、疾患別では下記の割合となっています。

脳血管疾患  :12.9%
認知症    :8.9%
悪性新生物  :8.5%
筋骨格系疾患 :8.4%
統合失調症  :5.8%
パーキンソン病:4.9%

これらの疾患で利用者の半数以上を占めるため、これから訪問看護に関わる方は、それぞれが具体的にどんな疾患なのか改めて調べておくと安心です。さらに、実際の訪問看護ではどのようなケアが提供されるのかも確認しておくと良いでしょう。

それでは、それぞれの疾患についてより詳しく紹介していきます。

脳血管疾患

頭痛を訴える利用者

脳血管疾患とは脳の血管が障害を受けることで引き起こされる疾患の総称です。具体的には脳卒中・脳出血・くも膜下出血などがあります。くも膜下出血は50〜60代に多いですが、脳梗塞は65歳以上が全体の9割を占めると言われています。

これらの疾患は障害された部位によって後遺症が残る場合が多く、症状は人それぞれです。実際の訪問看護では、日々の生活状況の把握や在宅環境の調整・内服管理・生活習慣の観察や指導などを行い、再発防止に努めます。その際、ケアマネージャーや福祉用具を扱う事業者、主治医などの関係機関と情報を共有し連携を図ることが大切です。

また、入浴動作や歩行などが上手くできない利用者の場合は、元の生活に少しでも近づけていくためのリハビリも必要になります。

認知症

超高齢化を迎える日本において、認知症を抱える高齢者は増加傾向にあります。厚生労働省によると、2025年には5人に1人が認知症になることが示されています。認知症といっても具体的には、アルツハイマー型認知症・レビー小体認知症・前頭側頭型認知症があり、症状・特徴などはさまざまです。

参照:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~

訪問看護でも関わることの多い認知症ですが、進行具合によってケア内容や訪問頻度も変化します。認知症の方は自覚症状を認識しにくいため、訪問看護師はバイタルサインの確認と異常の早期発見に努めます。

利用者が家族と同居している場合は、家族の介護負担が大きくなりすぎていないかを確認し、状況に応じてショートステイの利用が必要かどうかをケアマネージャーと検討し、勧めることもあります。

また、内服管理が難しい場合は内服薬のセットや内服介助を行います。利用者の日常生活の過ごし方を把握し、症状に合わせたサービスをケアマネージャーと相談をして、利用者が安心して在宅生活が送れるよう支援します。

利用者の活動量の低下が懸念される場合は通所サービスやリハビリの必要性についてケアマネジャーへ報告し、利用者に適したサービスを検討することもあります。

悪性新生物(がんや腫瘍)

がんの利用者に寄り添う看護師

医療の進歩と共にがん患者の入院期間は短縮傾向にあり、病院での治療から在宅療養と通院治療にシフトされつつあります。がんは誰でもなりうる可能性のある病気で、細胞の変異によって症状が表れます。

がんといってもさまざまな症状・ステージがありますが、訪問看護を利用する方の多くが、放射線や抗がん剤治療を行なっている方や、在宅での看取りを希望されてターミナルケアを望む方です。

医師の指示のもと、点滴や酸素療法・膀胱留置カテーテルの挿入や交換・麻薬などを使った疼痛コントロールなどが在宅でも行えるため、訪問看護師の関わりは大きな役割を果たすでしょう。

また、急な病状の変化にも対応する必要があり、24時間いつでも利用者が看護師と連絡が取れ、必要であれば訪問することもあります。がんの利用者がその人らしく過ごせるよう、多職種との連携を密にしながら在宅生活を支えることが訪問看護師の役割です。

筋骨格系疾患

加齢による骨密度の低下や下肢筋力の低下から、転倒等による大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折の方が訪問看護を利用します。骨折等により日常生活動作が難しくなると介護量が増えてしまうため、できるだけ再び転倒しないようアセスメントをすることが大切です。

骨折によって今までできていた日常生活動作が難しくなった場合は、必要に応じて在宅環境の整備や福祉用具の利用の提案、下肢筋力の維持・向上を目的としたリハビリを行います。

また、近年では骨粗しょう症治療のため、医師の判断のもと、利用者自身が注射を行う自己注射を使用することが多くなっています。そのため、自己注射を覚えるまでの間のフォローを目的に訪問看護を利用することもあります。

統合失調症

統合失調症は、思春期から40代に発症しやすい精神疾患の1つです。統合失調症は幻覚や幻聴の症状が現れやすい疾患ですが、これら以外にも感情の鈍麻や無気力などから日常生活に支障が出る場合があります。

統合失調症の方が訪問看護を利用する場合、医療保険の精神科訪問看護が適応されます。利用者によって症状が異なりますが、基本的には異常の早期発見・内服管理・社会復帰への支援を行っていきます。

精神科訪問看護であっても、看護師に精神科の勤務経験は必須ではありません。ただし、精神科等の経験がない場合は、精神科訪問看護基本療養費算定に関する研修等を受ける必要があります。

統合失調症に関わらず、精神疾患の利用者の訪問看護では利用者との信頼関係が重要です。少しずつ信頼関係を築きながら支援していきます。

パーキンソン病

リハビリを行う利用者と補助する看護師

パーキンソン病は50歳以降に発症する脳の病気です。脳における運動の仕組みを調整しているドーパミンが減少することによって、体の動きの緩慢さや震え、筋肉の固縮などの運動症状が生じるのが特徴となります。

パーキンソン病の利用者に対しての訪問看護における役割は、病状の管理と残存機能の維持・転倒予防などを目的としたリハビリがメインになります。

パーキンソン病は国が定めた指定難病の一つで進行性の病気です。そのため、利用者は少しずつ進行する症状と折り合いをつけながら生活していかなければなりません。訪問看護師は病気の進行に関する情報提供を適切に行いつつ、利用者とその家族の意向を尊重しながら関わっていくことが大切です。

まとめ

今回の記事では、訪問看護に多い疾患とその割合、実際の訪問看護の現場で提供されるケア内容について解説しました。訪問看護で携わることの多い疾患を少しでも理解できたのではないでしょうか。

実際には解説した以外にもさまざまな疾患の利用者がおり、複数の疾患を抱えながら在宅生活をしている方も少なくありません。また、がん末期に限らず、胃ろう・吸引・ストマ・褥瘡・酸素療法などの医療処置が必要な方が、在宅療養をしています。

昨今の高齢化と入院期間の短縮・医療技術の進歩により在宅療養の需要は増加しているため、今後も訪問看護の役割は重要になってくると言えるでしょう。

どんなケアや処置を行うか知っておくことも大事ですが、どの疾患の利用者であっても、利用者やその家族の意向・意思を尊重しながら関わることが訪問看護において最も大切です。訪問看護では決められた時間の全てを目の前にいる利用者やその家族に費やせます。これが病院・施設などの看護との違いであり魅力の一つです。

ぜひ、訪問看護が気になっている方はこの記事を参考にしてみてください。

編集部

訪看オウンドメディア編集部

訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。

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