訪問看護のこと
公開 / 最終更新
訪問看護で働く理学療法士の役割とは?仕事内容や病院との違い、必要なスキルを解説

病院で培った経験を活かし、利用者の暮らしに寄り添うリハビリを提供できることは訪問看護の大きな魅力です。
在宅のリハビリは、利用者の生活に直結した支援ができるというやりがいがある一方で、病院とは異なるスキルやリハビリの技術が求められます。
本記事では、訪問看護における理学療法士の役割や仕事内容、必要なスキルなど、転職前に知っておきたいポイントを解説します。
2分でわかる!白ゆり訪問看護の働き方
目次
訪問看護における理学療法士の役割
訪問看護における理学療法士は、リハビリを通じて利用者の自立度や生活の質(QOL)の向上を図り、長期的な在宅生活を支える役割を担います。
病院とは異なり、生活の中でどう動くかといった「生活の仕方全体」を視野に入れた支援が求められる点が特徴です。
また、医師や看護師といった多職種との連携も重要で、利用者の在宅生活をチーム全体で支えていきます。
訪問看護で提供するリハビリとは

訪問看護におけるリハビリは、利用者の自宅や入居施設を訪問し、生活環境に合わせたプログラムを行うことを指します。ケアマネジャーから依頼を受けた後、主治医が発行した指示書に沿ったリハビリが可能です。
リハビリは、理学療法士のほか、作業療法士、言語聴覚士と専門分野ごとに分かれた職種が携わります。
利用者の体調に配慮しながら身体機能の維持・改善を目指し、ベッドからの起き上がり、トイレや入浴の動作、出かけたいところに行く・趣味活動などができる体力をつけるなど、日常生活動作でできることを増やし、楽しみを感じられるよう支援します。
また、家族への助言や福祉用具の提案なども行うため、支援内容は多岐にわたります。
利用者の健康状態や生活習慣、住環境、家族構成などを総合的に考慮し、それぞれのニーズに合わせたきめ細やかなリハビリを提供することにより、生活全体の質を高めることが目標です。
そのため、訪問看護のリハビリではジェネラリストとしての視点が求められます。
訪問看護からのリハビリと訪問リハビリの違い
在宅でのリハビリには、訪問看護で提供するリハビリのほか、訪問リハビリがあります。どちらも「自宅でリハビリを続けてもらうこと」が主な目的ですが、所属や定義などが異なります。
| 項目 | 訪問看護からのリハビリ | 訪問リハビリ | 
| 所属 | 訪問看護ステーション | 医療機関(病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院)の訪問リハビリステーション | 
| 定義 (引用) | 居宅要介護者について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう ※訪問看護の一環として位置づけられる | 居宅要介護者について、その者の居宅において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションをいう | 
| 指示 | 利用者の主治医 | 医療機関に所属する医師 | 
| 特徴 | リハビリだけでなく医療的なサポートも実施、定期的な看護師訪問あり | 専門職によるリハビリが中心 | 
制度のほか単位数や料金など細かい違いがありますが、ここでは割愛します。これから在宅のリハビリを目指す理学療法士の方は、大まかな違いを理解しておくと良いでしょう。
病院におけるリハビリとの違い
訪問看護と病院では、リハビリの目的や連携の範囲などが異なります。違いについては以下の通りです。
リハビリの目的が違う
訪問看護と病院におけるリハビリの大きな違いは、リハビリの目的とゴールの設定軸が異なることです。
【訪問看護】
目的:現状の機能維持、状態悪化の予防、自立度の向上、家族の介護負担軽減など
ゴール:利用者のニーズにより異なる
【病院】
目的:機能回復、社会復帰を目指すリハビリなど
ゴール:退院後の生活に向けた回復
さらに、病院では退院までの短期間で関わることが多いですが、訪問看護は長期的な計画を立ててリハビリを実施するため、関わる期間にも違いがあります。
病院は「治療・回復」、訪問看護は「維持・継続」の視点が重要です。
連携の範囲が違う
病院では、医師や看護師を中心とした病院内での連携が基本ですが、訪問看護は利用者に関わるさまざまな多職種と連携します。
| 訪問看護 | 病院 | 
|---|---|
| 主治医、看護師、ケアマネジャー、介護職、福祉用具専門員、市の職員など、利用者に関係する多職種 | 所属する診療科の医師、看護師、ソーシャルワーカー、退院支援看護師、臨床工学技士など病院内に所属する医療従事者 | 
また、訪問看護においては第三者だけでなく、家族との連携も欠かせません。それぞれの専門性を活かした継続的なチームケアが必要になるため、より柔軟な対応力が求められます。
訪問看護で働く理学療法士(リハビリスタッフ)の仕事内容

訪問看護で働くリハビリスタッフ(理学療法士含む)の仕事内容は、病院や施設でのリハビリに比べて幅広く、生活に密着した内容になります。大きく分けると以下の4つです。
- 在宅でのリハビリテーション
- 住環境の調整
- 日常生活や介助の指導
- 記録・情報共有
訪問先での在宅リハビリテーション
訪問先での仕事内容、リハビリを行う基本的な流れは以下の通りです。
- バイタルチェック
- 血圧・脈拍・体温・呼吸などを確認し、安全にリハビリを行えるか判断します。
 
- 身体機能の評価
- 初回訪問では、歩行や動作に問題がないか評価し、転倒の原因や身体の使い方などの課題を分析し、ニーズに合ったトレーニングプログラムを組みます。
 
- リハビリの実施
- 評価に基づき、利用者の目標や生活状況に合わせたプログラムを実施します。
- ストレッチや筋力強化
- バランス訓練、関節可動域訓練
- 起き上がりや歩行などの基本動作訓練
- トイレや入浴などADL(日常生活動作)の練習
- 褥瘡予防のためのポジショニング
 
 
- 評価に基づき、利用者の目標や生活状況に合わせたプログラムを実施します。
- 終了後の確認と自主トレーニング指導
- リハビリ後は再度状態を確認し、必要に応じて家庭でできる自主トレーニングを指導します。
 
在宅では病院のように器具や設備が整っていないため、テーブルや壁などの生活環境を活用しながら無理なく継続できるリハビリを提供するのが特徴です。
住環境の評価・調整
利用者の自宅という生活環境を把握し安全に生活できるよう調整することも、理学療法士にとって重要な役割です。
- 室内の段差解消や手すりの設置
- ベッドからトイレまでの導線改善
- 家具配置の見直しによる転倒予防
- 必要に応じた福祉用具の提案
こうした環境改善は、ケアマネジャーなどの他職種と連携しながら進めることも多く、利用者が「できるだけ自立した生活」を送れるよう専門的な視点からサポートします。
日常生活・介助方法の指導
理学療法士の仕事は、訪問時のリハビリだけでなく、利用者と家族が日常を安楽に過ごすための具体的な指導も含まれます。
- ベッドでの体位変換や車いすへの移乗方法
- 歩行や階段昇降など日常動作のアドバイス
- 家族や介助者への介助方法の指導
指導の際は、利用者本人の生活習慣や家族の介護力も踏まえたアドバイスをすることが大切です。適切な指導により、利用者だけでなく家族の身体的・精神的負担を軽減できます。
訪問記録の作成・情報共有
訪問看護では、訪問記録の作成や多職種への情報共有といった事務仕事もあります。これらの業務は、今後のケア方針を検討するうえでの重要な基盤となります。
- 訪問記録の作成:その日のリハビリ内容や利用者の変化を記録
- 訪問看護報告書の作成:月1回、主治医やケアマネジャーに報告
- 多職種連携:多職種との日常的な情報共有、カンファレンスの意見交換
さらに、新規利用者の契約やケアマネジャーの挨拶などの営業的な活動を行うこともあります。
単にリハビリを提供するだけでなく、「地域におけるチーム医療の一員」としての役割が求められる点が、訪問看護で働く理学療法士の大きな特徴です。
【訪問看護】理学療法士(リハビリスタッフ)の1日の流れ
ここでは、訪問看護で働くリハビリスタッフの1日の流れを紹介します。
1日に訪問する件数は平均で5〜6件。リハビリ時間は、介護保険では20分・40分・60分、医療保険では30〜90分と決められています。
【例:リハビリスタッフの1日の流れ】
| 時間 | 内容 | 補足 | 
|---|---|---|
| 8:30 | 出勤・準備 | ・着替え、訪問準備 ・当日のスケジュールやカルテ確認 ・事業所によっては朝礼や清掃 | 
| 9:00 | 午前の訪問 (2~3件) | ・記録作業は移動の合間に行う | 
| 12:00 | 昼休憩 | ・必要時は他職種への報告や記録書の作成 | 
| 13:00 | 午後の訪問 (2~4件) | ・移動の合間に記録 ・事業所に戻り次第、事務作業 | 
| 17:00 | 残務処理・退勤 | ・事業所に戻る ・記録や報告、翌日の準備 ・月末は計画書や報告書の作成 | 
訪問先への移動手段は、車・自転車・バイク・公共交通機関と事業所によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
訪問看護の理学療法士に求められるスキル

訪問看護の理学療法士には、専門知識に加え、病院とは異なる幅広い視点と柔軟な対応力が求められます。ここでは、特に重要となるスキルについて紹介します。
コミュニケーションスキル
利用者や家族と信頼関係を築くうえで欠かせないのが、コミュニケーションスキルです。
訪問看護では、限られた時間の中で利用者のニーズを引き出し、それに応じたリハビリを行う必要があります。そのためには、対話を重ねながら安心感を与え、表情や動作からも気持ちをくみ取る力が大切になります。
さらに、訪問看護はチームでの連携が不可欠なため、医師や看護師、ケアマネジャーなど他職種に対しても、状況を正確にわかりやすく伝えるスキルも重要です。
コミュニケーションが円滑に進むことで、安全で質の高いリハビリの実現につながります。
多角的な視点とリスク管理力
在宅では、多様な疾患を持つ利用者と関わる機会が多くなります。そのため、ジェネラリスト的な視点を持ち、幅広い疾患や症状に対応する力が必要になります。
症状の背景を分析するアセスメント力や、利用者の小さな変化に気づく観察力、転倒や誤嚥、体調急変といったリスクを予測・回避する判断力は、訪問の現場で特に重要といえます。
こうしたスキルを発揮することで、生活全体を見据えたリスク管理が可能となり、利用者が安心してリハビリに取り組める環境を整えることができます。
福祉用具の知識と応用力
福祉用具は手すり一つをとっても多くの種類があり、利用者の状態や住環境に合わせた選定には専門的な知識が欠かせません。
歩行器や車椅子、手すりといった基本的な用具のほか、ベッドやリフトの導入が必要になるケースもあります。
理学療法士(リハビリスタッフ)は限られた生活空間を踏まえながら、安全性や適合性を見極め、最適な用具を提案する役割を担います。
また、既存の家具や環境を工夫してリハビリに活用する応用力も求められます。こうした取り組みは、利用者の自立度向上だけでなく、家族の介護負担軽減にもつながる重要なスキルです。
まとめ
訪問看護で働く理学療法士(リハビリスタッフ)は、利用者が望む「生活の場」に向けて、工夫をしながらリハビリを行えることが大きな魅力です。
身体機能の維持・改善だけでなく、生活環境の整備や家族支援、多職種との連携など、日常生活の質を高める役割を担います。
専門知識に加え、コミュニケーション力やリスク管理力、応用力も求められますが、その分やりがいも大きく、「生活に寄り添いたい」という思いを実現できる仕事といえます。
こんな方には訪問看護のリハビリがおすすめです。
- 利用者や家族がしたい生活に向けてしっかり関わりたい方
- 臨床経験をより広く活かしたい方
- 在宅支援の現場でスキルアップを目指したい方
実際に、病院から訪問看護へ転職した理学療法士の体験談を、以下に記載しています。
▶利用者さんの生活向上を目指して。理学療法士が在宅を選び、成長を続ける訳とは
▶リハビリから日常に楽しみを。人との関わりで見つけた訪問看護の魅力
職場見学会のご案内
訪問看護リハビリステーション白ゆりでは、地域医療を一緒に支える訪問看護師・理学療法士・作業療法士を随時募集しています。
この記事で当社にご興味を持っていただけましたら、ぜひ一度、職場見学会で話を聞いてみませんか?
この記事をシェアする
人気記事ランキング
ALL
週間
タグから探す





 
                             
                             
                            


 リンクをコピー
リンクをコピー 
 










編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。