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訪問看護のオンコールとは?内容や頻度、事例についても解説
訪問看護では、利用者が安心して自宅で療養生活を送れるよう、24時間365日いつでも連絡がとれる体制を整え、必要に応じて緊急訪問を行います。このような体制をオンコールといい、訪問看護の現場では、緊急当番・オンコール当番・待機などと呼ばれることもあります。
オンコールが鳴る頻度は利用者の重症度や医療依存度などの利用者側の条件と、ステーションの規模やスタッフ数といったサービス提供者側の条件によって異なり、一定ではありません。
オンコールへの対応は電話のみで解決できることもあれば、緊急訪問にて処置が必要な場合もあり、状況によっては病院へ救急要請をすることもあります。
今回は、訪問看護のオンコールについて内容や頻度、実際の事例を紹介します。オンコールは、訪問看護に興味がある看護師の多くが不安に感じやすい業務です。ぜひこの記事を参考に、オンコールの基本を知っていただければと思います。
訪問看護未経験の方もお気軽にどうぞ!
目次
訪問看護におけるオンコールとは?
在宅療養中の利用者やその家族にとって突然の体調悪化への不安は大きく、24時間365日いつでも相談できるオンコールがあることは非常に心強いものです。
オンコールの担当スタッフは専用の電話を持ち、基本的に自宅待機で電話に対応します。電話にすぐ出ることができ、かつ必要に応じて速やかに利用者の家へ緊急訪問ができる状態であれば、普段通りに生活しても問題ありません。
オンコールを受けた際は利用者や家族から状況を伺い、「電話のみ」で問題を解決できそうか「訪問」が必要かを判断する必要があります。
また、連絡は利用者本人や介護者である家族からが多いですが、医師やケアマネジャー、ヘルパーからの報告や相談が入ることもあります。
それでは、オンコールの具体的な内容について確認していきましょう。
オンコールの対応は電話か訪問の二つ
前述した通り訪問看護におけるオンコールの対応は、電話のみか訪問するかの二つに分かれます。
オンコールの連絡を受けたからといって必ず訪問が必要となるわけではなく、内容によっては電話のみで解決できる場合もあります。
ここからは電話対応と訪問の二つのパターンについて例を挙げて紹介します。
電話で対応する場合
電話で対応することの多いオンコール内容は以下の通りです。
・利用者や家族の不安が強く話を聞いて欲しい場合
・服薬のアドバイスが欲しい場合
・症状が軽く、経過観察する場合
・利用者本人や家族への口頭指示で問題が解決できる場合
精神的に不安定な利用者や一人暮らしで身近に相談相手がいないケースなどは、利用者の不安が強くなると「どうしたらいいかわからない」といったように電話がかかってくることがあります。
そういったケースは話を傾聴することで気持ちが落ち着くことが多いため、緊急での訪問が必要になることはそれほどありません。
また、平日に訪問した時点で問題が予測される状態である場合は、事前に医師の指示を確認し、利用者や家族、看護師同士で情報共有しておくことも大切です。
「今後どのような問題が起こる可能性があるのか」「どんな困りごとが出てきそうか」と想像力を働かせながら先回りして準備をすることで、利用者や家族の安心感にもつながります。
訪問して対応する場合
訪問が必要となることが多いオンコール内容は以下の通りです。
・緊急性があり、すぐに何らかの処置が必要な場合
・受診や緊急搬送が必要となる可能性が高い場合
・電話では状況がよくわからない場合
「転倒してベッドに戻れない」「便がでなくて苦しい」など、何らかの介助や処置が必要な場合は緊急訪問で対応します。
電話をかけてきた相手に難聴や認知機能の低下がある、または言葉が聞き取りづらいなど、電話での情報収集だけでは状況が把握できず、判断が難しいことも多くあります。
また、本人や家族はそれほど気にしていなくても医療者の視点で見ると重症というケースもあるため、判断に迷ったら実際に訪問して状況を確認した方が安全でしょう。
オンコールの電話が鳴る頻度はどれくらい?
オンコールが鳴る頻度は、訪問看護ステーションによって異なります。
利用者の中にターミナル期や医療依存度の高い方・独居の高齢者・不安が強い方が多い場合は、オンコールの回数は増える傾向にあります。
スタッフ一人当たりどのくらい当番を担当するかは、ステーションのスタッフ数やオンコールの体制が1人か2人かなどによっても異なるため、事前によく確認しておくと良いでしょう。
訪問看護のオンコール手当について
訪問看護のオンコール手当は、待機のみの場合・実際に出動した場合の2パターンが支給されます。待機する看護師が2人だと、メインとサブで手当金額が変わるケースもあります。
2015年に実施された調査によると、オンコールを1人体制としている事業所は全体の約4割、2人体制は約3割で、利用者数が多いほど複数体制を取る傾向にあるようです。
同調査ではオンコール手当についても集計しており、内容は以下の通りとなります。
オンコール待機手当の金額・割合(平日時間外) | |
金額 | 事業所の割合 |
1,000円未満 | 6.6% |
1,000~2,000円未満 | 34.2% |
2,000~3,000円未満 | 31.0% |
3,000~4,000円未満 | 10.1% |
4,000~5,000円未満 | 3.8% |
5,000円以上 | 4.1% |
緊急の連絡などで実際に訪問した場合、96.2%の事業所が報酬ありと回答しています。支払い方法については、時給での支払いが61.3%、定額手当での支払いが27.6%です。
定額での報酬についての集計は、下記の通りです。
オンコールで緊急訪問した手当(平日時間外・土日祝) | |
金額 | 事業所の割合 |
1,000~2,000円未満 | 12.9% |
2,000~3,000円未満 | 9.9% |
3,000~4,000円未満 | 16.8% |
4,000~5,000円未満 | 13.9% |
5,000円以上 | 28.7% |
参考:一般社団法人 全国訪問看護事業協会「平成27年度 訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業」
参考までに、当ステーションの手当について以下に示します。
訪問看護リハビリステーション白ゆり オンコール手当
◎オンコール当番手当(鳴っても鳴らなくても支給)
平日1,500円/日 土日3,000円/日
◎オンコール出動手当
1,500円/30分 3,000円/60分
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訪問看護でよくあるオンコールの内容とは?
オンコールにはさまざまな内容の電話がかかってきますが、その中でもよくある問い合わせ内容の一部を紹介します。
利用者の体調不良や転倒
オンコールの電話には、利用者の体調不良についての問い合わせが多く寄せられます。内容は、発熱や下痢・嘔吐など、はっきりと症状のあるものから、「なんとなく様子がおかしい」といった漠然としたものまでさまざまです。
例えば、発熱をしたというオンコールがあった場合は、応急処置として症状に応じた苦痛の緩和方法をアドバイスしたり、医師の指示のもとで解熱剤の使用方法を説明することもあります。
ほかにも転倒の報告や相談のオンコールも多く、「転倒してしまってベッドに戻れない」という本人からの電話や、「帰ったら転倒していたが、どうしたらよいか分からない」と家族から連絡が入ることがあります。
転倒によってけがをしたり出血している場合は、緊急訪問して処置を行うこともあります。また、骨折の疑いや意識障害がある場合は救急搬送が必要になることもあるので、状況に応じて判断する必要があります。
カテーテル類の管理や吸引などの医療処置
利用者の中には、カテーテルが留置されていたり、点滴や吸引などの医療的ケアを必要としている方もいます。カテーテル類は抜去や感染といったリスクがあるため、家族にとってもトラブル発生時の対応に関する不安は大きいです。
例えば、膀胱留置カテーテル挿入中の利用者で「排尿バックに尿が溜まっていない」という場合、どのような問題が考えられるでしょうか?
原因が管の閉塞であれば、状況によっては緊急でカテーテルの交換を行う必要がありますし、脱水のために尿量が減少しているのであれば、点滴が必要になるケースもあるでしょう。
また、痰の吸引のために緊急訪問を行うこともあります。日常的に吸引が必要な場合、指導を受けた家族が吸引の実施者である事が多いですが、痰が引ききれないときや呼吸状態に変化がある場合などはオンコールの連絡が入ります。
呼吸に関係する内容は緊急性の高い場合が多いため、迅速な対応やアドバイスが必要になることもあるでしょう。
服薬に関する問い合わせ
オンコールには「薬を飲み忘れた」「多く飲みすぎてしまった」といった薬に関する報告もあります。薬剤や状況によっては、医師や薬剤師に対応方法を確認することが必要です。
訪問看護師は、医師の指示通り服薬できなかった原因を探り、再発防止のための対策を利用者と一緒に考えます。
また、発熱時・疼痛時・便秘時など、必要に応じて使用する屯用薬については一日あたりの上限回数や内服間隔について質問されることが多いです。
日頃から利用者をよく観察し、今後の病状変化などの予測を立てて準備することで、オンコール件数を減らすことも可能であり、相談があった場合もスムーズに対応できるでしょう。
看取りについて
自宅看取りの経験がない家族にとっては人が亡くなる経過を目にしたことのない方も多く、刻々と変化していく利用者の様子に不安が強くなり、オンコールの頻度も増える傾向があります。
「喉がゴロゴロしているが、吸引しなくていいのでしょうか?」「辻褄の合わない話をしているけどどうしたらいいの?」といった家族からの質問が投げかけられることも珍しくありません。
訪問看護師は現状や今後起こり得る変化について、家族の精神的な負担や受け止めに配慮しながら、丁寧に説明することが求められるでしょう。
最期の時がいよいよ近づいてくると、「呼吸が止まったら連絡してください」と医師から説明される場合がありますが、訪問看護師は「不安や心配事があれば、いつでも連絡してくださいね」と声をかけ、最期まで利用者と家族に寄り添いながらケアを行います。
お看取りの後にエンゼルケアの希望があれば、家族と一緒に身体を拭いたり、お気に入りの服へ着替えを行ったりすることもあるでしょう。
オンコール対応の事例を紹介
ここからは、実際のオンコール事例を紹介します。
電話相談で解決したケース、緊急訪問で対応したケース、救急要請を行ったケースの3パターンを想定して説明しますので、それぞれの状況をイメージしながら確認してみてください。
電話相談で解決したケース
【利用者の状態】
Aさんは独居の高齢女性で、高血圧のため降圧薬を内服しています。年相応の物忘れはあるものの、身の回りのことは自立しており、服薬も自己管理です。
【オンコール内容】
ある日、朝食後に来客があり、内服をすっかり忘れてしまいました。昼頃、薬の飲み忘れに気づいた本人から慌てた様子で「朝の薬を飲み忘れちゃった!」とオンコールの連絡が入りました。
【どう対応したか】
電話で状況を詳しく伺った後、看護師は薬剤師に相談。朝1回のみの内服だったため、すぐに朝分の降圧薬を内服するようにアドバイスを受け、その内容を本人に伝えることで問題は解決しました。
緊急訪問で対応したケース
【利用者の状態】
Bさんは便秘症のため、訪問時に下剤のコントロールや食事内容についてのアドバイスなどをしています。
【オンコール内容】
ある晩、「便がつっかえているみたいで苦しそう。自力では出せないみたいだからすぐ来て欲しい」と家族から緊急訪問の要請が入りました。
【どう対応したか】
緊急訪問し状況を確認した後、摘便を実施。肛門近くの硬便を除去することで、その後はトイレで排便があり、苦痛は落ち着きました。
救急要請を行ったケース
【利用者の状態】
Cさんは、心不全で再入院を繰り返している利用者です。体力も低下しており、ステーション内ではオンコールがある可能性が高い利用者として情報を共有しています。
【オンコール内容】
夜間帯に「息苦しくて横になれない」という電話が本人から入ったため、すぐに緊急訪問に向かいます。状態を確認すると、血圧低下や顔面、下肢の浮腫、四肢冷感、冷汗などの身体所見から心不全の増悪が疑われました。
【どう対応したか】
緊急性があると判断し、病院へ救急要請を行います。Cさんは心不全の急性増悪で入院となりましたが、輸液や利尿剤の調整を行い、短期入院で自宅に戻ることができました。
まとめ
今回は、訪問看護のオンコール体制について紹介しました。オンコールの内容や電話が鳴る頻度は、事業所の規模やスタッフ数、利用者の重症度などで異なるため、入職後のギャップを防ぐためには事前に確認しておくことをお勧めします。
オンコールの中には緊急性の高いケースもあり、医療従事者としての知識や技術、判断力が問われる場面も多々あります。また、いつ・どんな連絡が入るかわからないため、どうしてもプレッシャーを感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、訪問看護のオンコールは利用者や家族が安心して生活を送るために欠かせないシステムであり、オンコール対応の経験は訪問看護師にとっても大きな成長につながる可能性があります。
また、対応に不安がある際には先輩に相談できる環境を整えているステーションがほとんどなので、気負いすぎず冷静に対応することを心掛けましょう。
この記事が、訪問看護に興味があるけどオンコールに不安があるという方の背中を押すきっかけになれば幸いです。
訪問看護師の1日の流れやオンコール当番の日の流れについては、下記の記事で説明しています。詳しく知りたい方はぜひチェックしてみてください。
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週間
編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。