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訪問看護と病棟看護の基本的な3つの違いは?働き方や向いている人も解説

訪問看護と病棟看護の基本的な3つの違いは?働き方や向いている人も解説

「訪問看護に興味はあるけど、自分にできるか不安」「病棟と訪問看護では、働き方がどう変わるのだろう」
病棟からの転職を考えたとき、このような疑問を抱く看護師は少なくありません。

高齢化の進行により在宅療養を希望する人が増え、それに伴って訪問看護師の需要も高まっています。以前では転職先としてあまり選ばれなかった在宅領域も、徐々に一般的な転職先の選択肢として浸透してきました。

とはいえ、自宅でケアを行う訪問看護のイメージがつかず、転職に踏み切れない看護師も多いのが実情です。

本記事では、訪問看護と病棟看護の違いについて解説します。具体的な働き方や向いている人の特徴も紹介しますので、訪問看護に興味のある方はぜひ参考にしてください。

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訪問看護と病棟看護の基本的な3つの違い

働く看護師

訪問看護と病棟看護では、求められる視点、勤務環境や関わる相手などに違いがあります。ここでは、両者の基本的な3つの違いを紹介します。

看護の目的の違い

病棟では、病気の治療や回復を目的とした看護が中心です。医師の指示に基づき、看護師は主に医療的ケアを担います。

訪問看護においても医師の指示に基づいた看護ケアが基本になりますが、暮らしを支える視点が重要になります。疾患や障がいを抱えながら自宅で生活する利用者に対し、その人らしい暮らしの継続を支えます。

多様なニーズにどう応えるか。限られた環境でQOLの向上や自立支援を図っていくことが訪問看護師の大きな役割です。

ケアを行う環境の違い

病棟医では、療設備の整った病室で看護を行います。複数の看護師が常駐し、医師ともすぐに連携が取れるため、緊急時の対応ができる体制が整っています。

一方で訪問看護では、利用者の自宅や施設が看護の場になります。住み慣れた環境で療養できるため、利用者にとっては安心感があり、QOL向上にもつながります。

ただし、在宅は医療設備が限られるだけでなく、生活環境も家庭ごとに異なることから、状況に応じた柔軟な判断力や工夫が求められます。万が一の対応も病棟ほどスムーズにはいかず、日頃から先を見越したケアを意識する必要があります。

連携する範囲の違い

病棟では、医師や看護師など院内の医療従事者との連携が中心です。担当する科によって関わる範囲も限られやすく、病院内で完結するケースが多いため、外部との関わりは少なめです。

訪問看護は、病院や介護事業所、薬局など、利用者を取り巻くさまざまな職種と連携しながら支援を行います。ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師などとこまめに連絡を取り合い、多職種で情報共有を図るチーム医療の実践が重要になります。

訪問看護と病棟の働き方の違い

訪問看護と病棟看護にはケアに関してだけでなく、勤務環境や働き方にも大きな違いがあります。以下に解説していきます。

夜勤の有無

働き方における大きな違いは、「夜勤の有無」です。

病棟では、2交代または3交代制のシフトで勤務するのが一般的で、日勤・夜勤ともに複数名体制で看護にあたります。

訪問看護は基本的に日勤のみの勤務となり、夜勤はありません。ただし、多くの事業所ではオンコール体制(夜間・休日の緊急対応)を導入しており、交代で携帯電話を持って待機し、必要に応じて出動することもあります。

さらに、訪問看護では自転車や車での移動も業務の一部となるため、天候や交通事情に応じた時間管理も求められます。

患者や利用者と関わる時間・期間

病棟から訪問看護への転職理由として多く挙げられるのが、「利用者とじっくり向き合える」という点です。

病棟では複数の看護師が勤務しているものの、1人が多くの患者を担当する必要があり、事務作業や介護業務を並行して行う場面も少なくありません。そのため、1人の患者とじっくり関わる時間を確保するのは難しいのが実情です。

訪問看護では、1回の訪問あたり30〜90分かけて1対1のケアを提供します。時間内はその方だけに集中して対応することが可能です。

また、入院期間が数日〜数カ月程度に限られる病棟に比べ、訪問看護では数年にわたって同じ利用者と関係を築き、生活を支えていくケースも珍しくありません。

訪問看護特有の業務

看護師としての基本的な業務内容は共通しており、近年は在宅でも行える医療行為が増えたことで、訪問看護にも病棟と同等の専門知識と技術が求められます。

一方で、訪問看護には病棟とは異なる独自の業務もあります。医師やケアマネジャー、ヘルパーなど外部との連携が日常的に発生し、計画書や報告書の作成、退院前カンファレンス、サービス担当者会議への参加など、調整力や事務処理能力が求められる場面も多いです。

加えて、訪問看護ステーションは依頼があって初めてサービスが開始されるため、営業的な視点や地域との関係づくりも重要です。

また、医療保険・介護保険の制度理解や算定ルールの正しい運用も業務の一部であり、制度面に強くなることも訪問看護師にとって欠かせない力となります。

このように、訪問看護師には看護技術に加えて、書類作成、制度理解、調整力、ビジネスマナーといった多面的なスキルが求められます。

訪問看護と病棟|それぞれに向いている人の特徴は?

疑問を浮かべる看護師

訪問看護と病棟看護では、看護の目的や働き方が異なるため、向いている人の特徴にも違いがあります。ここではそれぞれに向いている人の特徴を詳しく見ていきましょう。

訪問看護に向いている人

訪問看護に向いている人には、以下のような特徴があります。

  • 人と関わることが好き
  • 利用者の生活背景に興味、関心がある
  • 自主性があり、マニュアルにない場面でも考えて行動できる

前提として、看護師はどの職場でも人と関わる仕事ですが、訪問看護では関係する人の範囲がより広がります。利用者本人だけでなく、その家族や多職種の関係者(ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師など)とも連携が必要となるため、病棟以上に高いコミュニケーション力と調整力が求められます。

そのため、「人と関わることが好き」といった姿勢や関心が、知識や技術以上に重視される傾向があります。

また、患者の退院後の生活や背景に関心を持ち、「その人らしい暮らし」を一緒に考えながら寄り添える人も訪問看護に適していると言えるでしょう。

加えて、訪問先ごとに環境や設備が異なり、利用者の状態やニーズもさまざまです。こうした状況下で柔軟に判断・対応できる自主性や臨機応変さも、訪問看護師には重要な資質です。

【関連記事】
訪問看護師に求められる能力は?転職に必要な資格や経験も解説

病棟に向いている人

一方で、病棟に向いている人には以下のような特徴が見られます。

  • ある程度ルーティンに沿って働きたい
  • 医療設備が整った環境で働きたい
  • 看護スキルを磨きたい
  • 給与面を重視

病棟の大きなメリットは、医療機器や設備が整っており、治療体制が安定していることです。特に大学病院や中〜大規模病院であれば、最新の医療技術や専門性の高い治療にも携わる機会があり、看護師として知識や技術を深めたい方には非常に良い環境です。

また、病棟では一日のスケジュールがある程度決まっているため、ルーティン業務を好む人にも向いています。

訪問看護は夜勤がないため、どうしても病棟よりも給与が下がる傾向にあります。そのため、収入面を重視したい人や、夜勤による収入を維持したい人は、病棟勤務の方が適している場合もあるでしょう。

訪問看護師が転職して感じた病棟との違い

訪問看護リハビリステーション白ゆりで働く看護師

病棟から訪問看護に転職した看護師たちは、実際にどのような違いを感じているのでしょうか。ここでは、訪問看護リハビリステーション白ゆりで活躍している看護師のリアルな声を紹介します。

【白ゆり北30条 S.Sさん】
訪問看護では、病院と違って医療者が主導する場面は少なく、利用者さんが主役になります。最初、その違いに戸惑いがありました。

また、訪問先では看護師が1人で対応するため、判断に迷ったらどうしよう、という不安もありました。

病院ではすぐ先生に相談できましたが、在宅では報告の取捨選択も必要ですし、利用者さんの次の訪問までの生活を見越して支援を考えなければならないので、頭の切り替えが大変でしたね。でも、半年くらいで慣れたと思います。

S.Sさんは現在、白ゆり北30条の管理者として働いています。より詳しいインタビュー記事は以下をご覧ください。
訪問看護で大切にしている“利用者さんが主役”という一貫した視点

【白ゆり中央 Y.Nさん】
訪問看護は1人で利用者さんの家に伺うという点で最初は不安もありましたが、逆に自分のペースで進められる業務が病院よりも多く、気が楽に感じる部分もありました。

一番はやっぱり、利用者さんと密に関われる点です。コミュニケーションを取りながら一人ひとりと丁寧に向き合えているなと、日々感じています。もともと人と話すのが好きなので、色んな方とお話ができるのは訪問看護ならではの魅力だと思います。

Y.Nさんは、4年の病棟経験を経てから訪問看護に転職した看護師です。経験が浅い故の不安や、白ゆりのサポート体制については、以下の記事でご紹介しています。
迷いながら始めた訪問看護。周囲の支えと学びの中で見つけたやりがい

【白ゆり南郷 M.Yさん】
最初に戸惑ったのは、病院では当たり前にそろっていた必要物品が家庭だとそろっていないことでした。

あと、24時間いつでも駆けつけられるわけではないので、限られた訪問時間の中で先を見据えて看護し、必要なことを利用者さんに伝える必要がある点も難しく感じました。

具合が悪くなったときの対処法や、どのタイミングで病院に連絡すべきかなど、予測を立てたうえで指示するのは今でも迷います。

病棟に勤めていたM.Yさんは、仕事と子育ての両立を目指して訪問看護に転向しました。白ゆりに転職して働き方がどのように変わったのか。ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
初めてでも安心して始められた。病院から訪問看護へ転職した看護師の声

病棟から訪問看護に転職すると、ケアに対する考え方や環境の違いに戸惑う場面は少なくありません。とはいえ、白ゆりではほとんどのスタッフが試行錯誤しながら経験を積み、周囲と相談しながら成長しています。

訪問看護で感じやすいギャップと慣れた先にあるやりがい

訪問看護は、入職1年以内に理想とのギャップを感じて離職する層が一定数存在します。実際、以下のような声をよく耳にします。

  • じっくり看護ができると思っていたけど、想像以上にハードだった
  • 業務の幅が広く、病棟以上に大変だと感じる
  • 1人での判断に迷う場面が多く、自信が持てない

これらは全て事実であり、実際に働いてみてギャップが生まれるという方は珍しくありません。

しかし、訪問看護は病棟では得ることができないやりがいや楽しさがあることもまた事実です。経験を重ねることで判断力や対応力がつき、訪問看護師として成長したときに、初めてやりがいを感じることができるようになります。

人の生死に関わる看護師にとって、場所や対象者が変わっても「人を看る」ということに変わりはありませんが、訪問看護はさらに「人の人生を看る」というところに携わることができます。大変な仕事ではありますが、その分大きな充実感が得られる仕事です。

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訪問看護リハビリステーション白ゆりでは、地域に根差した医療をともに支える訪問看護師を随時募集しています。

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そんな方は、ぜひ職場見学会にご参加ください。

現場スタッフと直接話せる機会であり、応募前の不安や疑問を解消できます。皆さまのご参加を、心よりお待ちしております。

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まとめ

今回は、訪問看護と病棟看護の大きな違いについて解説しました。

訪問看護と病棟看護は、看護の目的や関わり方、働き方などに大きな違いがあります。どちらが優れているという話ではなく、「自分がどんな看護をしたいか」「どんな働き方を望むか」という視点で転職先を選ぶことが大切です。

キャリアの方向性やライフスタイルに合わせて選ぶことで、自分らしくやりがいを持って働ける看護の形が見つかりやすくなります。

編集部

訪看オウンドメディア編集部

訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。

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