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【看護師向け】セルフマネジメントとは?支援のポイントや訪問看護での事例も紹介

看護師の中には、指導をしても行動変容につながらず、結果として「押し付け」になってしまうのでは…と悩む方もいるのではないでしょうか。
特に生活の場で支援する訪問看護では、利用者さまの価値観や生活背景に寄り添いながら自立を促すケアが求められるため、より難易度が高くなります。
本記事では、看護におけるセルフマネジメントの基本的な考えや実践のポイントを解説します。訪問看護でのセルフマネジメント支援の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
看護におけるセルフマネジメントとは

セルフマネジメントとは、患者さま自身が病気や障がいと向き合いながら、生活の中で体調や行動を主体的に管理していくことです。
慢性疾患ケアで重視される方法ですが、回復期のリハビリテーションや終末期の意思決定など、あらゆる病気において患者さまのQOL(生活の質)を高めるうえでの欠かせない視点でもあります。
看護におけるセルフマネジメント支援は、病気や障がいを抱える患者さまが自分らしい生活を送れるよう、自己管理能力を高めることを目的とします。そのためには、本人の価値観に沿ったゴール設定と多角的なアプローチが重要です。
セルフマネジメントで目指すゴール
セルフマネジメントのゴールは、「正しく服薬する」「毎日血圧を測定する」など、課題やニーズによって異なります。大切なのは、行動そのものが目的になるのではなく、本人が望む生活の実現につながっていることです。
ゴールは主に次の3つの観点で整理できます。
○身体的な健康状態を最適化・維持する
→ 病気の完治が難しい場合でも、身体機能をできる限り良い状態に保てるよう支援する。
○症状や機能障害を軽減し、生活の質を高める
→ 息切れや痛みなどの症状をコントロールし、本人が望む活動や役割の維持を目指す
○医療従事者・家族・地域との協力関係をつくる
→ 1人で抱え込まず、周囲と連携をしながら健康管理を継続できる環境を整える
これらの目的は病期や状況によって変化しますが、「本人の生活を支える」という本質は変わりません。
セルフマネジメント支援における3つの視点
セルフマネジメント支援では、以下の3つの視点が求められます。これらは互いに関連しているため、どれか一つに偏らず、バランスよく関わることが自己管理能力の向上につながります。
治療面の視点
服薬・吸入薬の使用・血糖測定など、治療や療養法を適切に継続するための支援
生活面の視点
仕事・家事・趣味など日常生活上の役割や行動を維持・調整するための支援
感情面の視点
不安やストレス、喪失感など、病気に伴う感情に対処できるよう寄り添う支援
セルフマネジメント支援に関わる看護師の役割
セルフマネジメント支援において、看護師は患者さまの「併走者」として寄り添う存在です。一方的に指導するのではなく、本人の生活ニーズや価値観を把握し、その実現に向けて共に歩む姿勢が求められます。
具体的には、日常生活で直面する課題を一緒に整理し、解決策を考え、実行につなげるための支援(問題解決スキルを高める関わり)をします。
主体性を尊重しながら支えられる関係性を築き、患者さまが自信を持ってセルフマネジメントに取り組めるようにサポートすることが、看護師の役割です。
セルフマネジメント支援を効果的に進めるためのポイント
セルフマネジメントは患者さまが主体となる取り組みだからこそ、看護師の関わり方が成否を左右します。支援を効果的に進めるために、以下の3点を意識しましょう。
課題や問題点を自分事として捉えてもらう
セルフマネジメントの第一歩は、患者さまが抱える健康上の課題や身体の状態を、自分の問題として認識してもらうことです。
そのために、現状と「こう暮らしたい」という希望とのギャップを共有し、本人が「この問題を解決したい」と思える動機づけを支援します。
例えば、「息切れがつらくて買い物に行けない」という訴えに対しては、背景にある思いや生活への影響を丁寧に聞き取り、その人にとっての困りごとの本質を一緒に明らかにしていきます。
押し付けにならないよう、患者さまのペースに合わせた声かけや情報提供を行い、歩調をそろえた関わりを意識しましょう。
行動に意味を見出してもらう
セルフマネジメントを継続するには、その行動が生活にどう影響するのかを本人が実感できることが重要です。
看護師は、服薬や運動療法などの必要な行動が、目指す生活の実現にどうつながるのかを、専門用語を避けて具体的に伝えます。
さらに、すでに実践できている行動についても効果を言語化し、「あなたの行動が今の生活を支えている」と意味づけることで、継続への意欲が高まります。
自己効力感を高めてもらう
自己効力感とは、ある課題に対して「自分ならできる」と感じられることです。自分の行動を自分で管理するセルフマネジメントでは、この自己効力感が特に重要になります。
自己効力感は、小さな成功体験の積み重ねや周囲の励まし、他社の成功体験に触れることで高まりやすくなります。看護師は、患者さまが成功体験を得られるよう、努力や工夫を肯定していきます。
そうすることで、「できた」という実感が意欲を生み、行動の継続につながります。
セルフマネジメント支援の事例|訪問看護の場合
理解を深めるために、訪問看護でのセルフマネジメント支援の事例を紹介します。ここでは、アセスメント→状態理解の支援→意味づけの支援→感情面のサポート→振り返りという一連の流れに沿って整理します。
【事例:Bさん(70代女性、2型糖尿病、独居)】
状態と目的:
訪問看護開始時、血糖コントロールが不良。本人は「インスリン注射は面倒」「食事制限はつらい」と消極的で、血糖管理への意欲が低い状態だった。本人の価値観に沿って動機づけを行い、血糖管理に前向きに取り組めるよう支援する。
① アセスメント
生活習慣や価値観、困りごとを丁寧に聴取したところ、「週に一度の友人とのランチが唯一の楽しみ」という思いを把握した。
② 状態理解の支援
血糖値の記録を一緒に確認し、数値が高い日と低い日の体調の違いや生活パターンとの関連を共有した。血糖値が身体に与える影響や数値による変化についても、本人の理解度に合わせて説明した。
③ 意味づけの支援
「血糖管理は、楽しみにしているランチを続けるための手段」と、本人の価値観に沿って意味づけを行った。インスリン注射を“やらされること”ではなく、望む生活を守るための行動として捉えられるよう関わった。
④感情面のサポート
インスリン注射を続けることで血糖値が安定してきていることを伝え、訪問時に「次のランチでは、おいしいものがたくさん食べられますね」とプラスの声がけを継続した。努力が実を結んでいることを実感してもらう。
⑤小さな成功を共有・振り返り
「今週は毎日注射ができた」など具体的な成果を一緒に振り返ることで、Bさんの自信が育ち、自己管理が定着していった。
セルフマネジメント支援を続けるためのコツ

セルフマネジメント支援を効果的に継続するには、患者さまの状況に応じた柔軟なアプローチが必要です。
ここでは、看護師が日々の実践で意識すべき5つのコツを紹介します。これらを押さえることで、患者さまの主体性を尊重しながら、無理のない支援の継続につながります。
実現可能な小さな目標から設定する
初めから大きな目標を設定してしまうと、患者さまの意欲を失いかねません。具体的なステップに細分化し、「必ず達成できる」と思える小さなゴールから始めることが重要です。
例えば「外出する」という最終的な目標がある場合、「まず玄関先まで歩いてみる。続けられそうなら1週間がんばってみる」といった、短期スパンで実施可能な目標を具体的に設定します。そうして小さな成功体験を積み重ねることで自己効力感が高まり、次のステップへ進みやすくなります。
患者さま自身が目標を決められるよう、看護師はあくまでサポート役として関わりましょう。
本人の理解度に合わせた情報提供を行う
一度にたくさんの情報を伝えると、患者さまの混乱を招いてしまいます。看護師は、患者さまの年齢や状態、理解度に応じ、専門用語を避けながら、わかりやすい言葉で説明することが大切です。
特に、高齢者や認知機能の低下がある方は、何度も説明が必要になるなど、より丁寧な配慮が求められます。表情や行動も観察しながら根気よく寄り添い、患者さまが安心して質問ができる関係性を築くことが重要です。
ご家族がいる場合は、一緒に説明を聞く機会を設け、ご家族も同じ理解を持てるように配慮しましょう。
本人が選択・決定できるよう支援する
セルフマネジメントの主役は患者さまであり、最終的に方針を決定し行動するのは本人です。
そのため、看護師は患者さまの生活スタイルや価値観を尊重し、複数の選択肢を提示しながら本人が納得して選択できるよう支援します。たとえ看護師の考えと異なる選択をしても、まずは受け止めることが大切です。
病状の変化に応じて支援を調整する
慢性疾患では症状の悪化や新たな合併症の出現などにより、状態が変化することがあります。そうした場合は、セルフマネジメントの内容も変更し、柔軟に対応することが重要です。
一度決めた目標が状態によって変化した際、看護師も支援内容をそのまま続けるのではなく病状に合わせて内容を調整します。
また、医師やケアマネジャーなどの多職種と情報を共有し、協働して支援内容をアップデートしていくことも大切です。状態の変化に合わせた臨機応変な対応が、継続的な支援につながります。
家族との協働を意識した支援を行う
在宅でのセルフマネジメントでは、ご家族の存在が欠かせません。
家族関係はそれぞれ異なり、患者さまを積極的に支援するご家庭もあれば、心配するあまり過干渉になったり、焦りから本人の代わりに治療方針を決めてしまう、ということもあります。
看護師は、患者さまのペースを尊重することの大切さをご家族に伝え、「見守る」支援の重要性を共有します。ご家族を協働のパートナーとして巻き込み、一緒に患者さまを支えていく環境を整えることが重要です。
ご家族の不安や負担にも耳を傾け、適切な役割分担や多職種との連携を図ることも看護師の大事な役割になります。
まとめ
セルフマネジメントは、患者さまが病気とともに自分らしい生活を送るための重要な取り組みです。
看護師の役割は専門知識を伝えることではなく、患者さまの併走者として寄り添い、問題解決スキルを高める支援を行うことです。
特に訪問看護の現場では、生活の場だからこそ見える利用者さまの本当のニーズや困りごとに気づくことができます。実現可能な小さなゴールから始め、本人の選択を尊重しながら柔軟に支援を調整していくことが大切です。
患者さま自身が「できる」という自信を持ち、意味を実感しながら行動を継続できるよう丁寧に関わり続けることが、効果的なセルフマネジメント支援につながります。
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編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。