訪問看護のこと
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訪問看護の受け持ち制・チーム制の違い|メリット・デメリットについても解説

訪問看護では受け持ち制」「チーム制」といった看護体制があります。それぞれの看護体制によって働き方が変わってくることからも、訪問看護への転職に興味がある方のなかには「どのような体制なの?」と気になる人もいるでしょう。
現在は両方の良さをうまく取り入れている事業所も多く存在しますが、本記事では訪問看護の受け持ち制・チーム制の特徴やメリット・デメリットを一般知識としてわかりやすく紹介します。
訪問看護における看護体制について理解し、より自分に合った転職先を選ぶための参考にしてください。
訪問看護未経験の方もお気軽にどうぞ!
目次
訪問看護の受け持ち制とチーム制とは?

訪問看護には、主に「受け持ち制」と「チーム制」の2つの看護体制があります。それぞれの体制には特徴があり、看護師がどのように利用者と関わるかが異なってきます。
【受け持ち制】
特定の利用者を担当する看護師が決まっており、その看護師が一貫してケアを行う。
特徴:
利用者と信頼関係を深めやすく、継続的な看護が可能。ただし、重症な場合は担当者に負担が集中しやすくなるデメリットがある。
【チーム制】
1人の利用者に対して、複数の看護師がチームとなってケアを行う。
特徴:
チーム内で情報共有ができ、急な変更にも柔軟に対応しやすい一方で、利用者との関係構築に時間がかかりやすいほか、責任の所在が曖昧になりやすい。
どちらにもメリット・デメリットがあるため、事業所の運営方針や利用者の状態に応じて適切に使い分けられています。
訪問看護の受け持ち制のメリットは?

訪問看護の受け持ち制では、以下のメリットがあります。
・ 利用者に一貫して関われる
・ 利用者との信頼関係が築きやすい
・ 多職種連携がしやすい
・ 訪問スケジュールの管理がしやすい
利用者に一貫して関われる
受け持ち制では1人の利用者に対して特定の看護師が継続的に関わるため、利用者の状態の変化に気づきやすくなります。そのため、日々の訪問を通じて健康状態や生活環境の変化を早期に把握でき、必要な対応を迅速に行える点が大きなメリットです。
また、利用者の情報をしっかりと収集することでケア計画の精度を高め、一貫した看護が提供できます。こうした関わり方は利用者に安心感を与え、質の高いケアが実現しやすいと言えるでしょう。
利用者と信頼関係が築きやすい
同じ看護師が担当し続けることから、利用者との信頼関係を深めやすくなります。利用者にとっても毎回異なる看護師が訪れるより、顔なじみの看護師が訪問する方が安心感を得やすいものです。
看護師が利用者の生活状況や病状の変化を把握しているため、より個別的で適切なケアを行うことができる点も信頼されやすい要因となります。
このような安定した関係性は、利用者が健康状態や悩みを打ち明けやすくなり、ケアの質を向上させる大きな要素となるでしょう。
多職種連携がしやすい
受け持ち制の特徴として、内部で関わるスタッフが少なく、利用者1人に対する窓口がはっきりしていることから、外部の他職種と連携がしやすい点が挙げられます。
担当する看護師が限られることで、情報伝達のミスが減少し、利用者の状態に関する重要な情報が確実に共有されます。また、医師やリハビリスタッフとの連携もスムーズに行えるため、ケアが一貫して提供されます。
外部との調整に注力できることで地域の医療機関や介護サービスとの連携が強化され、より包括的なケアが提供できるでしょう。
訪問スケジュールの管理がしやすい
受け持ち制は、看護師が担当する利用者が固定れていることで訪問日や時間があらかじめ決まるケースが多く、訪問スケジュールが立てやすいのが特徴です。
予定が安定しているため急な変更や調整が少なく、時間管理のミスやダブルブッキングといったトラブルを防ぐことができます。
その結果、看護師は訪問に集中しやすくなり、空いた時間を記録や他の業務に充てることが可能になります。効率的に働けるため心にもゆとりを持ちやすい点も大きなメリットです。
訪問看護の受け持ち制のデメリットは?
訪問看護の受け持ち制には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。特に、関わる看護師が固定されるため、看護師にかかる負担やストレスが大きくなりやすいという特徴があります。
・ 利用者が1人の看護師に依存しやすくなる
・ 情報が属人化しやすい
・ 他のスタッフと情報共有がしにくい
・ 休みづらい
利用者が1人の看護師に依存しやすくなる
受け持ち制では、利用者やその家族が特定の看護師に依存してしまうことが多々あります。依存の程度によっては看護師に過度の負担がかかり、精神的なストレスの増加や仕事に対するプレッシャーの高まりにつながりかねず、仕事が辛いと感じてしまうかもしれません。
依存関係を避けるためには、初回の訪問時に他の看護師も関与することを説明しておくことが効果的です。このように、あらかじめ別のスタッフとの接点を作っておくことで依存を防ぎ、看護師と利用者双方の負担を軽減できます。
情報が属人化しやすい
特定の看護師のみが担当することで、ケアの内容や利用者の情報が「属人化」しがちです。属人化とは、ある業務や役割が特定の人に強く依存してしまっている状態を指します。
受け持ち制では、しばしば「担当看護師しか利用者の状態やケア内容を把握していない」「他のスタッフでは対応が難しい」といった状況が起こりやすいです。
属人化によって、業務が特定のスタッフに偏りやすくなるほか、オンコール対応や担当者変更などが困難になるというリスクが発生します。
そのため、情報共有の仕組みやチームでのサポート体制の整備によって属人化のリスクを減らす工夫が求められています。
他のスタッフとの情報共有がしにくい
先述した「属人化しやすい」という点にも共通しますが、担当看護師が利用者の状態を深く理解している一方で、他のスタッフは情報を十分に把握していないことがあります。
そのため、看護の方向性やケアの方法について相談したい場面でも周りの看護師に相談しづらいという場合があります。
特に、判断に迷ったときやケアに関する工夫を考えたいときに頼れる相手が限られてしまい、対応に不安を感じることもあるかもしれません。
こうした状況を防ぐためには、日頃からの情報共有や定期的なミーティングなどを通じて、チーム全体で利用者の状況を把握する体制づくりが大切です。
休みづらい
受け持ち制のメリットとして訪問スケジュールの管理がしやすい点を挙げましたが、訪問の曜日や時間が固定されているために休みを取るタイミングの調整が難しいといったデメリットもあります。
さらに、受け持ち制の特徴として、自分しか利用者の状態やケアの内容を詳しく把握していないことも多く、他のスタッフが代わりに訪問するのが困難なケースも珍しくありません。
また、他のスタッフもそれぞれ担当する利用者の訪問があるので、急な代替対応がしにくいのが現状です。こうした背景から、休暇や急な休みに備えて、情報共有やチーム内でのこまめな連携が重要となります。
訪問看護のチーム制のメリットは?

訪問看護のチーム制は、複数の看護師が関与することで利用者のアセスメントが多角的に行われるなど、多くのメリットがあります。チーム制のメリットは以下の通りです。
・ さまざまな視点からアセスメントができる
・ チームで連携がとれる
・ 休みの際に代行訪問のスタッフが決めやすい
さまざまな視点からアセスメントできる
チーム制の大きなメリットとして、さまざまな視点から利用者のアセスメントができることが挙げられます。複数の看護師が関わることで、自分一人では気づかなかった問題や視点を得られるでしょう。
これにより、利用者の状態をより深く理解することができ、必要なケアをより包括的に提供できるようになります。ケアの質が向上し、利用者に対する対応がさらに洗練されます。
チームで連携がとれる
チーム制のもう一つのメリットは、チーム内で連携が取れる点です。複数の看護師が同じ情報を共有しているため、急な状況の変化にも柔軟に対応できるようになります。
例えば、緊急の訪問があった場合、複数のメンバーが利用者の状態やケア内容を把握しているので迅速に対応でき、ケアに支障をきたすことがありません。
また、情報がリアルタイムで共有されることで、利用者への対応に一貫性が保たれます。
休みの際に代行訪問のスタッフが決めやすい
チーム制では、急な休みに伴うスケジュールの調整がしやすいメリットがあります。複数の看護師がチームとして働くことで突然欠員が発生しても周りのメンバーがサポートでき、代行訪問するスタッフが決めやすいです。
そのため、休暇や病欠の際にもスムーズに業務を引き継ぎ、利用者へのケアを途切れさせることなく提供することが可能です。チーム内での柔軟な対応は、看護師一人一人の負担軽減にもつながるでしょう。
訪問看護のチーム制のデメリットは?
訪問看護のチーム制は、複数の看護師が関わるため情報共有で漏れが起こりやすいなどの問題点があり、信頼関係の構築にも時間がかかりやすいケースが多いです。それぞれ詳しく説明します。
・ 情報共有に工夫が必要
・ 利用者との信頼関係の構築に時間が掛かる
・ 看護師の人員が必要
・ 責任の所在が曖昧になりやすい
情報共有に工夫が必要
チーム制では複数の看護師が関わるため、情報共有において漏れが生じるリスクがあります。看護師同士での情報の伝達がうまくいかないと利用者へのケアが不十分になる可能性があるため、チーム制を導入するには情報共有の体制を整えることが重要です。
また、情報をまとめて管理するためのマネジメント的な役割を担うメンバーが必要となり、スタッフ全員が適切に情報を把握できるように工夫する必要があります。
これらの課題を解決するためには、チーム内のコミュニケーションを強化するチャットツールの活用などが求められるでしょう。
利用者との信頼関係の構築に時間が掛かる
1人の利用者に対して複数で担当することから、それぞれの看護師が利用者と関わる時間が限られてしまいます。そのため、受け持ち制と比べて信頼関係を築くのに時間がかかるといわれています。
利用者にとっても担当する看護師が頻繁に変わることで安心感が持ちづらくなるので、より時間をかけて信頼を深める必要があります。
ケアの質に影響を与えないよう、時間をかけてでも丁寧に関わり続ける姿勢が必要です。
看護師の人員が必要
チーム制では、一つのチームに複数の看護師が必要となるので、必然的にある程度の人員が必要になってきます。
訪問看護ステーションは数人のスタッフで運営する小規模な事業所が多いため、チーム制を導入すること自体が難しい場合もあります。
また、複数の看護師が担当できるようにローテーションを組むことで同行訪問が必要となるなど、スケジュール調整にも手間が掛かってしまいます。
責任の所在が曖昧になりやすい
複数のスタッフで業務あたることから、計画書やサマリー、フェイスシート、アセスメントシートなどの書類作成のほか、家族やケアマネジャー、医師などへの連絡は「誰がするのか?」を、チームで毎回確認する必要が出てきます。
誰かがやっているだろうという判断により、最終的に誰も手を付けていないという問題が起こる可能性があるため、チーム間で円滑に仕事を進めるにはマネジメントの役割を担うスタッフが必須です。
受け持ち制かチーム制かは訪問看護ステーションによる
看護体制として受け持ち制・チーム制のどちらを採用しているかは、各ステーションの方針や運営形態によって異なります。
それぞれに特徴やメリット、デメリットがあるので、一概にどちらが優れているとは言えません。なかには「受け持ち制」「チーム制」それぞれの良さを取り入れ、ミックスさせているようなステーションもあります。
例えば、普段は担当の看護師が訪問を行い、夜間や緊急時には他のスタッフが対応できるようチーム内で情報共有を行うなど、柔軟な仕組みを整えているケースです。
自分が理想とする看護スタイルや働き方、各ステーションが採用している看護体制を照らし合わせて、より自分に合った職場を選ぶことが、長く安心して働くための第一歩となるでしょう。
訪問看護リハビリステーション白ゆりは主に受け持ち制を採用
訪問看護リハビリステーション白ゆりでは主に受け持ち制を採用し、その特性を活かしながら課題を補う工夫を続けています。これらの工夫を実施し、お互い助け合いながらケアの質を高めていく文化が根付いていることも、白ゆりの大きな特徴です。
【白ゆりの工夫】
・ チャットツール、電子カルテといたITの活用により、スタッフ間の情報共有を迅速かつ確実に行える体制の構築
・ 朝礼や夕礼など全員で集まる場をつくることで、ケアの相談や意見交換がしやすい環境を実現
・ 定期的に別の看護師が訪問する「シャッフル訪問」を実施し、特定の看護師への依存を避ける取り組み
白ゆりでは一緒に地域医療を支える仲間を募集しています
訪問看護リハビリステーション白ゆりでは、一緒に働く仲間を募集しています。今後、ますます必要性が高まる在宅ケアについて学べる環境で、私たちと地域医療を支える一員になりませんか?
訪問看護に少しでも興味のある方は、職場見学会に参加してみてください。
↓ 白ゆりの職場見学会の雰囲気を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
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まとめ
本記事では、訪問看護における「受け持ち制」と「チーム制」の特徴、メリット・デメリットについて解説しました。
どちらの体制にも利点と課題があります。受け持ち制かチーム制かによって利用者との関わり方や日々の業務の進め方に大きな影響を与えるため、自分の希望する働き方にマッチした環境を選ぶためにも、各ステーションの方針や看護方式をしっかり確認しておくことが大切です。
これから訪問看護への就職・転職を考える方にとって、少しでも参考になればと思います。
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編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。