訪問看護のこと
公開 / 最終更新
訪問看護に多い疾患とその割合は?利用者の特徴も解説

訪問看護への転職を考えている看護師には、「訪問看護の利用者はどのような疾患を抱えているのか?」と疑問を抱く人も少なくありません。
病院完結型の医療から、医療・ケア・生活が地域で完結する医療への転換に伴い訪問看護の利用者は増加傾向にあり、さまざまな疾患を抱えた方が在宅で療養生活を送っています。
本記事では、訪問看護の利用者に多い疾患の内容と割合を解説します。どのような疾患が多いのか特徴をあらかじめ理解しておくことで、訪問看護への一歩が踏み出しやすくなります。
2分でわかる!白ゆり訪問看護の働き方
訪問看護を利用する人の特徴
訪問看護は、病気や障がいを持ちながら地域で療養する方々が、その人らしい暮らしを送れるように支援するサービスです。
訪問看護が必要な全世代の人が利用可能で、年齢層は小児から高齢者まで幅広いですが、利用する多くの方が高齢者です。さらに高齢者の中でも、ある程度自立した日常生活を送れる方から、医療依存度の高い方まで多岐に渡ります。
特徴として、訪問看護の利用者は複数の疾患を抱えている場合も多いため、多様な疾患に対応する必要があります。そのため、アセスメント力や幅広い知識、柔軟な対応力が求められます。
訪問看護の利用者に多い疾患と割合は?

日本訪問看護財団の資料によると、訪問看護に多い疾患とそれぞれの割合は以下の通りです。
脳血管疾患 :11.2%
悪性新生物 :9.0%
認知症 :8.6%
筋骨格系疾患:8.2%
心疾患 :7.0%
統合失調症 :6.3%
出典:公益財団法人日本訪問看護財団「訪問看護の現状とこれから2025年版」P8
さらに、高血圧性疾患、糖尿病、パーキンソン病などを抱えている方も多く、これらの疾患で利用者の半数以上を占めます。これから訪問看護に関わる看護師は、それぞれの疾患について改めて調べておくと安心です。
それでは、利用者の主な疾患について説明していきます。
脳血管疾患

脳血管疾患は、脳の血管が障害を受けることで引き起こされる疾患の総称で、脳卒中・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などを引き起こします。くも膜下出血は50〜60代に多いですが、脳梗塞は65歳以上が全体の9割を占めると言われ、脳血管疾患は訪問看護の利用者に最も多い傷病です。
これらの疾患は後遺症が残ることが多く、身体機能や認知機能にも影響を及ぼします。実際の訪問看護ではその人の状態を考慮しながら、日々の生活状況の把握や在宅環境の調整・内服管理・生活習慣の観察や指導などを行い、再発防止に努めます。
また、入浴や歩行といった日常動作が難しい利用者には、元の生活に少しでも近づけていくためのリハビリも必要になります。
福祉用具を導入する可能性もあるため、事業者やケアマネジャー、主治医などの関係機関と情報を共有し、連携を図りながらケアを継続することが大切です。
悪性新生物(がん・腫瘍)
医療の進歩と共にがん患者の入院期間は短縮傾向にあり、病院での治療から在宅療養と通院治療にシフトされつつあります。がんは誰でもなりうる可能性のある病気で、細胞の変異によって症状が表れます。
がんといってもさまざまな症状・ステージがありますが、訪問看護を利用する方の多くが、放射線や抗がん剤治療を行なっている方や、在宅での看取りを希望されてターミナルケアを望む方です。
医師の指示のもと、点滴や酸素療法・膀胱留置カテーテルの挿入や交換・麻薬などを使った疼痛コントロールなどが在宅でも行えるため、訪問看護師の関わりは大きな役割を果たすでしょう。
また、急な病状の変化にも対応する必要があり、24時間いつでも利用者が看護師と連絡が取れ、必要であれば訪問することもあります。がんの利用者がその人らしく過ごせるよう、多職種との連携を密にしながら在宅生活を支えることが訪問看護師の役割です。
認知症
超高齢化を迎える日本において、認知症を抱える高齢者は増加傾向にあります。厚生労働省によると、2025年には5人に1人が認知症になることが示されています。認知症といっても具体的には、アルツハイマー型認知症・レビー小体認知症・前頭側頭型認知症があり、症状・特徴などはさまざまです。
訪問看護でも関わることの多い認知症ですが、進行具合によってケア内容や訪問頻度も変化します。認知症の方は自覚症状を認識しにくいため、訪問看護師はバイタルサインの確認と異常の早期発見に努めます。
利用者が家族と同居している場合は、家族の介護負担が大きくなりすぎていないかを確認し、状況に応じてショートステイの利用が必要かどうかをケアマネージャーと検討し、勧めることもあります。
また、内服管理が難しい場合は内服薬のセットや内服介助を行います。利用者の日常生活の過ごし方を把握し、症状に合わせたサービスをケアマネージャーと相談をして、利用者が安心して在宅生活が送れるよう支援します。
利用者の活動量の低下が懸念される場合は通所サービスやリハビリの必要性についてケアマネジャーへ報告し、利用者に適したサービスを検討することもあります。
参照:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」
筋骨格系疾患

加齢による骨密度の低下や下肢筋力の低下から、転倒等による大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折の方が訪問看護を利用します。骨折等により日常生活動作が難しくなると介護量が増えてしまうため、できるだけ再び転倒しないようアセスメントをすることが大切です。
骨折によって今までできていた日常生活動作が難しくなった場合は、必要に応じて在宅環境の整備や福祉用具の利用の提案、下肢筋力の維持・向上を目的としたリハビリを行います。
また、近年では骨粗しょう症治療のため、医師の判断のもと、利用者自身が注射を行う自己注射を使用することが多くなっています。そのため、自己注射を覚えるまでの間のフォローを目的に訪問看護を利用することもあります。
【関連記事】
訪問看護のアセスメントに重要な4つの視点とは?多角的な判断がカギ
心疾患
心疾患は心臓に起こる病気の総称で、心筋梗塞・狭心症・心臓弁膜症といった疾患があります。日本では、生活習慣の欧米化や高齢化に伴い高齢者の心不全患者が増加傾向で、「心不全パンデミック」とも呼ばれるほど大きな課題となっています。
訪問看護では、心疾患を持つ利用者の状態観察と再発予防が中心となります。具体的には、バイタルサインや体重の測定、浮腫や呼吸苦の有無などを確認し、再発・悪化の防止に努めることが重要です。また、医師の指示のもと、自己管理の方法(服薬、塩分・水分など)を指導することもあります。
症状の悪化により再入院になると利用者のQOLにも影響します。利用者や家族は症状が悪化することに対する不安が大きいため、症状の説明や緊急時の対応方法などをわかりやすく伝えることが大切です。
心不全を抱えながら自宅で過ごすには、生活の制限が不可欠です。利用者が安心して暮らせるよう生活全体を見据えたケアを継続していきましょう。
統合失調症
統合失調症は、思春期から40代に発症しやすい精神疾患の1つです。統合失調症は幻覚や幻聴の症状が現れやすい疾患ですが、これら以外にも感情の鈍麻や無気力などから日常生活に支障が出る場合があります。
統合失調症の方が訪問看護を利用する場合、医療保険の精神科訪問看護が適応されます。利用者によって症状が異なりますが、基本的には異常の早期発見・内服管理・社会復帰への支援を行っていきます。
精神科訪問看護であっても、看護師に精神科の勤務経験は必須ではありません。ただし、精神科等の経験がない場合は、精神科訪問看護基本療養費算定に関する研修等を受ける必要があります。
統合失調症に関わらず、精神疾患の利用者の訪問看護では利用者との信頼関係が重要です。少しずつ信頼関係を築きながら支援していきます。
パーキンソン病
パーキンソン病は50歳以降に発症する脳の病気です。脳における運動の仕組みを調整しているドーパミンが減少することによって、体の動きの緩慢さや震え、筋肉の固縮などの運動症状が生じるのが特徴となります。
パーキンソン病の利用者に対しての訪問看護における役割は、病状の管理と残存機能の維持・転倒予防などを目的としたリハビリがメインになります。
パーキンソン病は国が定めた指定難病の一つで進行性の病気です。そのため、利用者は少しずつ進行する症状と折り合いをつけながら生活していかなければなりません。訪問看護師は病気の進行に関する情報提供を適切に行いつつ、利用者とその家族の意向を尊重しながら関わっていくことが大切です。
【関連記事】
訪問看護でできること・できないことを解説!訪問看護サービスの範囲は?
まとめ
訪問看護に多い疾患・割合、利用者の特徴について解説しました。
利用者は解説した以外にもさまざまな疾患を抱えており、医療処置が必要な方も、がん末期に限らず、胃ろう・吸引・ストマ・褥瘡・酸素療法などのケアを受けながら在宅療養をしています。
昨今の高齢化と入院期間の短縮・医療技術の進歩により在宅療養の需要は増加していることから、訪問看護の役割はますます重要になるでしょう。
手技について知ることも大事ですが、訪問看護においては利用者や家族の意向・意思を尊重しながら関わることが最も大切です。限られた訪問時間の全てを使ってその人のニーズに沿ったケアができるのは、訪問看護の魅力の一つでもあります。
訪問看護では、医療保険・介護保険による対象者の違いもあります。基本的な内容は下記の記事を参考にしてください。
【関連記事】
訪問看護の対象者は?医療保険・介護保険の違いも解説
訪問看護リハビリステーション白ゆりでは、地域医療を一緒に支える訪問看護師・理学療法士・作業療法士を随時募集しています。
採用情報はこちら👇
訪問看護リハビリステーション白ゆり採用サイト(札幌・函館)
この記事をシェアする
あわせて読みたい
人気記事ランキング
ALL
週間
タグから探す



編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。