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ADL評価とは?BI・FIMの使い分けと「できるADL・しているADL」の評価ポイント

患者さまのADL評価で「この採点で合っているのかな?」と迷った経験はありませんか?
BIとFIMの使い分けや、リハビリ室と病棟で見せる動作が違うときの判断は、若手にとっては悩みどころです。
本記事では、ADL評価の基本からBI・FIMの使い分け、「できるADL」と「しているADL」の違い、さらに病院・介護施設・在宅それぞれの評価視点までを解説します。明日からの評価・申し送りの参考にしてみてください。
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ADL(日常生活動作)とは

ADL(Activities of Daily Living)は、人が日常生活を送るうえで毎日繰り返し行う基本的な動作のことを指し、日本語では「日常生活動作」と訳されます。
食事をする、トイレに行く、着替える、入浴するといった一連の動作がADLに含まれます。
臨床で扱うADLは、一般的に以下の8つの基本動作で整理されます。
- 起居動作(寝返り・起き上がり)
- 移乗(ベッド・車椅子間の乗り移り)
- 移動(歩行・車椅子操作)
- 食事
- 更衣
- 排泄
- 入浴
- 整容
ADL評価は、患者さまの「今の生活機能」を把握する基本の指標です。医師・看護師・リハビリ職・介護職それぞれが共通言語で現状を共有するために、ADLという指標は欠かせません。
なぜADL評価が必要なのか
ADL評価の目的は大きく3つあります。
1つ目は現状把握です。どの動作にどの程度介助が必要かを明確にすることで、患者さまに必要なケア量やリスク(転倒・褥瘡など)を予測できます。
2つ目は目標設定とリハビリ計画への活用です。入院時と退院時のADLを比較することで、介入の効果を客観的に評価できます。
3つ目は多職種連携です。評価を点数化することで、主観に頼らない客観的な情報共有が可能になります。
WHOが提唱するICF(国際生活機能分類)では、生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルで捉え、ADLはこの中の「活動」レベルに位置づけられます。
そのためADL評価は単なる動作評価ではなく、患者さまの「生活そのもの」を見る視点が求められるのです。
BADLとIADLの違い
ADLは、さらに2つのカテゴリに分類されます。基本的な生活動作を指す「BADL」と、より応用的な生活動作を指す「IADL」です。
それぞれの違いを押さえておくことで、評価の目的と対象に合った指標を選べるようになります。
BADL(基本的日常生活動作)とは
BADL(Basic Activities of Daily Living)は、食事・排泄・更衣・入浴・整容・移乗・移動といった、生命維持と自己管理に直結する基本動作を指します。一般的にADLと呼ぶときは、このBADLを示すことが多いです。
BADLは、主に入院患者さまの状態やリハビリの評価で扱われ、自立度がそのまま介助量・在院日数・退院調整に直結します。
回復期リハビリテーション病棟のアウトカム評価でも、BADLに相当するFIMの運動項目が用いられています。
IADL(手段的日常生活動作)とは
IADL(Instrumental Activities of Daily Living)は、BADLよりも一段複雑で、社会生活を送るために必要な動作を指します。
具体的には、買い物・調理・掃除・洗濯・金銭管理・服薬管理・公共交通機関の利用・電話応対などが含まれます。
IADLは、在宅復帰や地域生活の継続可否を判断するうえで重要な指標となります。たとえ歩行や更衣が自立していても、服薬管理ができなければ独居継続は難しい、という判断につながるため、高齢者の介護予防や退院支援の場面で特に重視される領域です。
ADL評価の代表指標(BI・FIM)

ADL評価にはさまざまな指標がありますが、臨床現場で最もよく使われているのが「Barthel Index(BI)」と「Functional Independence Measure(FIM)」の2つです。
どちらも国際的に標準化された指標で、診療報酬の算定基準でも採用されています。どちらを使うかは、評価の目的や患者さまの状態に応じて選ぶ必要があります。
ここでは、それぞれの特徴と使い分けの考え方を解説します。
Barthel Index(BI)の特徴
BI(バーセル・インデックス)は1965年に発表された評価指標で、現在も国内外で広く使われています。
実施時間が短いため、介護保険の主治医意見書や入退院時のスクリーニングなど、全体像を手早く把握したい場面で選ばれます。
【BI】評価項目の構成
評価対象は生活の基盤となる基本動作に絞られ、厚生労働省の資料では次の10項目から構成されます。
BI(バーセル・インデックス)評価項目

引用:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に向けて(自立支援・重度化防止の推進)P46」
全項目最高点の合計は100点満点です。各項目を「自立/部分介助/全介助」の枠組みで判定し、0点・5点・10点・15点のいずれかが割り当てられています。
注目したいのは項目ごとの重みづけで、移乗と歩行は最高15点と最も重く、整容と入浴は5点、残り6項目は10点となっています。移動に関わる動作ほど配点が大きく、生活自立度を左右する動作に比重が置かれた採点構造です。
BIの活用場面
項目数が少なく判定段階もシンプルなため、評価者が変わっても結果がぶれにくく、厚労省資料でも検者間信頼性が報告されています。
一方、介助量の変化を広い枠で括るため、僅かな改善を点数に反映させにくい側面もあります。そのため、急性期病棟や外来でのスクリーニング、介護保険申請時の現状把握に適した指標です。
FIM(機能的自立度評価法)の特徴
FIM(機能的自立度評価法)は1983年に開発された指標で、「介助者がどの程度手を貸したか」を定量的に可視化できるのが最大の特徴です。
BIより項目数が多く採点も細かいため、介入の効果を継続的にモニタリングしたい場面で威力を発揮します。
【FIM】評価項目の構成
身体面だけでなく認知面までカバーする点が、BIと大きく異なるポイントです。厚労省資料に基づくと、運動ADL13項目と認知ADL5項目の計18項目で構成されます。
FIM(機能的自立評価法)評価項目

引用:厚生労働省「中医協検-2-2参考(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要 P1」
表にあるように、各項目を1〜7点までの7段階で評価します。段階が細かく、「介助量が少し減った」「声かけだけで動けるようになった」といった僅かな変化も点数に反映できるため、リハビリ介入の効果判定に向いています。
FIMの活用場面
FIMの運動項目は、回復期リハビリテーション病棟のアウトカム評価(実績指数の算定)にも採用されている公的性格の強い指標です。回復期領域で働く看護師・リハビリ職にとっては、採点基準の理解が日常業務の前提となります。
BIとFIMの使い分け
では、実際に現場でBIとFIMをどう使い分ければよいでしょうか。その判断の軸は「評価の目的」と「対象となる患者さまの状態」です。一例ではありますが、判断軸をもとに向いている場面を挙げます。
BIが向いている場面
- スクリーニング的にADLの全体像をざっくり把握したい
- 採点に慣れていないスタッフでも運用したい
- 介護保険の申請資料など対外的な提出物で用いる
- 急性期病棟や外来で短時間での評価が求められる
FIMが向いている場面
- 回復期リハビリテーション病棟でアウトカム評価を行う
- 介入前後の細かい変化をとらえたい
- 認知面も含めて総合的に評価したい
- チームで詳細な介助量の共有が必要
若手が迷いやすいのが「同じ動作なのに、BIとFIMで違う点数になる」場面です。
これは、評価対象の範囲(BIは3段階、FIMは7段階)と採点基準(FIMは「介助者が手を貸した量」で厳密に判定)が違うためで、両者の点数を直接比較することはできません。
施設ごとに採用されている指標が異なるため、自施設の評価基準を理解して運用することが大原則です。
また、一般的にBIは訓練場面での潜在能力である「できるADL」の評価に、FIMは日常生活で実際に行っている「しているADL」の評価に適した指標とされています。
この「できるADL」と「しているADL」の違いは、評価をケアに活かすうえで特に重要な視点となるため、次のセクションで詳しく見ていきます。
「できるADL」と「しているADL」の違いと評価への活かし方

ADL評価で最もつまずきやすいのが、「リハビリ室ではできているのに、病棟ではやっていない」という現象です。
これが「できるADL」と「しているADL」の違いであり、両者の差はケアプラン立案や退院支援の質を大きく左右する重要な視点です。指標の点数だけを追っていると見落としやすいポイントでもあります。
「できるADL」と「しているADL」の違い
できるADLとは、訓練場面や評価場面で「その人が最大限の能力を発揮したときにできる動作」のことです。リハビリ室で療法士と1対1で取り組めば歩行器で10メートル歩ける、といった場面がこれにあたります。
一方、しているADLは、「日常生活のなかで実際にその人が行っている動作」を指します。病棟では歩行器で動く機会がなく、車椅子で移動している、というケースが典型です。
両者の差が大きい患者さまは能力はあるのに発揮されていない状態であり、環境調整や声かけで生活の質が大きく変わる可能性があります。
なぜ「できるADL」と「しているADL」に差が出るのか
差が生じる要因は、大きく3つに整理できます。
1つ目は環境要因です。病棟のトイレが遠い、手すりが片側にしかない、ベッドの高さが合っていない、といった物理的な環境が動作を妨げます。
2つ目は介助者のスキル・関わり方です。患者さまが自分でできる動作でも、介助者が時間短縮のために先回りして介助してしまうと、しているADLは低く留まります。
3つ目は用具・疼痛・意欲の問題で、装具の準備が間に合わない、疼痛で動きたがらない、不安で一歩が出ない、といった要因も関与します。
たとえば、更衣動作でリハビリ室では上衣のボタンを自分で留められる(できるADL)のに、病棟では看護師が時間の都合で介助してしまっている(しているADL)というケースは珍しくありません。
この差を見逃すと、退院後の自立度を過小評価してしまいます。
ADL評価の記録・共有のポイント
評価結果は、点数だけを記録するのでは不十分です。何を・どの場面で・どう観察したかを具体的に記録に残すことが、多職種連携のカギになります。
記録のポイントは次の3点です。
- 評価した場面を明記する(リハビリ室か病棟か、朝か夕方か)
- 介助量だけでなく介助の内容を書く(「声かけのみで自立」「片手支持が必要」など)
- 「できる/している」の差を併記する(環境調整の余地が明確になる)
カンファレンスでは、理学療法士・作業療法士・看護師・介護職・MSWのそれぞれで見ている場面が異なります。
リハビリ職は「できるADL」、看護・介護職は「しているADL」の情報を持ち寄ることで、退院後を見据えた支援計画が立てられます。
【病院・介護施設・在宅別】ADL評価で押さえるべき視点
ADL評価の基本は同じでも、評価する場所が変われば何を見るべきかの視点は変わります。
急性期病棟と特別養護老人ホームでは、同じ「トイレ動作自立」という点数であっても、その意味合いや次の支援につなげ方は大きく異なるからです。
ここでは、病院・介護施設・在宅それぞれの評価現場で押さえておきたい場面ごとの視点を解説します。
病院でのADL評価
病院でのADL評価では、病棟環境でできている=自宅でもできるとは限らない点に注意が必要です。
病棟はバリアフリー設計で手すりも完備、ベッドの高さも調整済みの環境です。そこで自立していても、段差のある自宅・マットの厚い布団・狭いトイレでは同じ動作ができないことはたびたび起こります。
評価時には「患者さまの自宅環境ではどうか?」を常に頭に置き、家屋情報(段差の有無・手すり・トイレは洋式か和式か)をご家族から聴取したうえで評価結果を解釈することが重要です。
退院前訪問指導や家屋調査を実施できる施設であれば、実環境でのADL再評価を組み合わせると精度が高まります。
また、急性期から回復期への転棟時、回復期から在宅への退院時は、評価指標を統一して申し送ることで情報の分断を防げます。
介護施設でのADL評価
介護施設(特養・老健・介護医療院など)でのADL評価は、生活場面全体を通した観察が基本です。
病院のようにリハビリ室で切り出して評価する機会は少なく、食事・排泄・入浴・移動といった日常ケアの中で評価することになります。
施設側で特に意識したいのは、介護職ごとの介助量のばらつきです。同じ入居者さまでも、Aさんの介助ではトイレで自立できているが、Bさんの介助では立ち上がりから介助という状況は珍しくありません。
これは「しているADL」が介助者によって変動している状態で、施設全体でケアの標準化を図る必要があります。
評価結果はケアプランに反映され、自立支援促進加算などの加算算定にも関わるため、定期的かつ統一した基準での評価が求められます。また、申し送りノートや介護記録にADLの変化を残す運用も有効です。
在宅でのADL評価
在宅でのADL評価でカギとなるのは、自宅環境・ご家族(介護者)の介助スキルです。
訪問看護・訪問リハビリでは、利用者さまの動作だけでなく、家屋の構造・福祉用具の使用状況・家族の介助方法まで含めて評価します。
たとえば浴室に手すりがない、トイレまでの動線に段差がある、ベッドではなく布団で寝起きしている、といった環境因子はADL自立度に直結します。
また、ご家族が先回り介助をしてしまっている場合、本人の能力が発揮されず「しているADL」が低下する典型パターンに陥ります。
退院支援の視点からは、入院中の「できるADL」が自宅で再現できるかをご家族と共有し、必要に応じて福祉用具貸与・住宅改修・訪問リハビリ導入を提案することが大切です。
ケアマネジャーや地域包括ケア病棟の退院支援看護師との連携が、スムーズな在宅移行を支えます。
まとめ
ADL評価は、患者さまの生活機能を把握する出発点であり、多職種連携の共通言語でもあります。
代表指標であるBIはシンプルで扱いやすく、FIMは詳細な介助量の変化をとらえられる点が強みです。目的と対象に合わせて使い分けるようにしましょう。
また、できるADLとしているADLの差に目を向けることで、環境調整やケアの見直しにつながる気づきが得られます。
病院・介護施設・在宅それぞれの場面で評価の視点を切り替えながら、点数だけでなく「どの場面で、どう観察したか」を丁寧に記録することが、質の高いケアにつながります。
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編集部
訪看オウンドメディア編集部
訪問看護師として働く魅力をお伝えすべく、日々奔走する白ゆりのWebメディア担当。
ワークとライフに役立つ記事を中心に、訪問看護に関するさまざまな情報を発信しています。